島根の企業が宇宙開発に挑む
島根県の秦精工株式会社と𠮷川製作所が、宇宙航行に新たな可能性をもたらすプロジェクトに取り組んでいます。このプロジェクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の次世代電気推進機、通称「ABIE-X」に向けたエンジン部品の加工を担当するもので、宇宙空間で燃料を現地調達できる画期的な技術を実現するものです。
ABIE-Xとインテーク部品の意義
ABIE-Xは、宇宙空間に存在する大気を集め、その大気を利用してイオンエンジンを駆動させる次世代推進システムです。従来の人工衛星は燃料を地上で積み込むのに対し、このシステムは宇宙での“現地調達”を実現します。これは、超低高度軌道(VLEO)での長期運用や惑星探査の実現に向けて非常に重要な技術であり、その一環となる部品加工が、秦精工と𠮷川製作所の手によって行われています。
インテーク部品は大気を取り込む“入り口”であり、宇宙機の推進性能に不可欠な要素です。部品の精度や形状は、推進効率に直接影響を与えるため、精密な加工技術が要求されます。このため、2社はそれぞれの技術を持ち寄り、専門的な加工を行っています。
特殊加工と品質の確保
今回担当した特別な部品は、表面に特殊な刃形状が施され、その形状が宇宙空間での大気を効率よく集めるために重要です。部品の形状や精度に関しては、JAXAや設計会社との協議を重ねながら進め、最適な加工条件を決定しました。この中で、薄肉円筒形状の部品は熱や力による変形が生じやすく、それによる高精度な加工が大きな課題でした。
そのため、加工時の持ち方や条件の見直しを行い、部品が変形しないよう注意を払いながら作業を進めました。
特に、部品の特殊形状を加工するために、市販の工具では満足な結果が得られませんでした。その結果、外部製造された専用工具を用い、高精度での旋盤加工が実施されました。こうした細かな配慮も、宇宙での利用を見据えた高品質な部品製造において非常に重要だと言えます。
試作品の製作と性能検証
部品は、最終的に宇宙機の組立品として利用されるため、試作品を用いた組立性の確認も行われました。さらに、ギザギザの間隔(ピッチ)が適正かどうかを確認する試作品も製作しました。加工条件の最適化や性能確認が完了した後、製造された部品の品質(ギザギザの精度や滑らかさ)については、島根県産業技術センターの技術支援を受けて評価を実施し、その結果をもとに加工方法を検討しました。
納品と今後の展望
試作で性能と組立性が確認された後、本番品の高精度加工が行われ、その結果、複数の部品が組み立てられて完成品となりました。この製品は、宇宙環境下で使用されることを前提として高品質が求められ、最終的には組立完了の状態で納品されました。
このプロジェクトを通じて、厚い意義を持って部品加工に当たった両社は、今後も精密加工技術を高め続け、宇宙開発や先端産業への貢献を目指します。未経験者でも世界に挑戦できる技術者になれるフィールドがここには存在し、これからも挑戦し続ける姿勢を崩しません。
企業概要
秦精工株式会社
- - 所在地:島根県安来市黒井田町691
- - 設立:1970年3月6日
- - 事業内容:エジェクタピン及び特殊鋼精密機械加工部品の製造
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株式会社𠮷川製作所
- - 所在地:島根県出雲市下古志町769-9
- - 設立:1967年5月20日
- - 事業内容:電機機械部品加工、自動機・省力化機械部品加工
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