電力供給の安定化が求められる中、株式会社エナリスが新たに、東京大学生産技術研究所と共同で進める『エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門(ESI)』の第Ⅲ期研究に加わることを発表しました。この研究では、2024年度から2026年度にかけて、EV(電気自動車)や家庭用蓄電池を含む低圧リソースの最適な活用方法を追求します。
近年、再生可能エネルギーの導入が進む中で、電力の需給バランスを適切に保つことが一層重要な課題となっています。特に、風力や太陽光などの再エネは出力が不安定なため、スムーズな電力供給のためには調整力を発揮する新たな仕組みの構築が求められています。エナリスが注目しているのは、環境負荷の少ない電気自動車や、自宅で生成した電力を貯蔵する家庭用蓄電池です。これらの蓄電池をIoT技術を活用して、需給調整に役立てる方向で研究を進めています。
課題と解決策
この低圧リソースを調整力として活用するには、多くの課題があります。一つが、EVや家庭用蓄電池は本来の用途があるため、その使用状況を把握しながら調整力を供出することです。例えば、EVは主に移動手段として利用され、家庭用蓄電池は夜間や非常時の電力供給に用いられます。従って、これらのリソースを圧迫することなく、余裕がある時間帯を見極める必要があります。
さらに、EVの走行距離や充電状態によっても調整力の供出量は変化するため、正確な予測が難しいのです。エナリスは、これらの問題解決に向けた実証事業に取り組んできました。具体的には、数十台のEVを用いて、調整力として活用可能なEVの割合や供出可能な電力量を研究しています。
新たな研究内容
今シーズンの研究では、家庭用蓄電池やヒートポンプ給湯器を含む新たなリソースも対象にして、より大規模な実証を行います。エナリスはESIA(ESIアグリゲーション)モデルを活用して、さまざまなリソースの組み合わせを最適化し、供出可能な電力量とその経済性を分析します。特定の生活パターンや電力需給の状況を把握することで、ユーザーが所有するリソースをいかに効率よく利用できるかが鍵となります。
この研究の成果は、2024年度末に開催されるESI報告会で発表される予定です。エナリスは、今後も産官学の強力な連携をもって、再生可能エネルギーが主力電源となる未来、さらには脱炭素社会の実現に向けた新しい電力システムの構築を目指しています。