精神障害者雇用、上司・同僚の意識変化に注目! 定量調査で明らかになった現場の実態とは?
パーソル総合研究所が実施した「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」の第2弾結果が発表されました。この調査は、精神障害のある従業員と共に働く上司・同僚へのアンケート調査を実施し、精神障害者と、共に働く上司や同僚の双方が長く安定的に活躍できる環境を整えるための基礎データとして活用することを目的としています。
ポジティブな意識変化、しかし課題も
調査結果によると、精神障害者と働くことに対して、事前の想定よりもポジティブな印象を持った上司・同僚の割合は約7割にものぼりました。
しかし、ポジティブな変化を得るためには、精神障害者の受け入れが成功していることが前提条件となります。受け入れが成功していない場合は、障害者に対する偏見が解消されなかったり、多様性を受け入れる意識が育ちにくい傾向が見られました。
受け入れ成功の鍵は?
精神障害者の受け入れが成功している職場では、上司・同僚がダイバーシティや助け合いに肯定的なマインドセットを持っており、障害者雇用についての知識や理解を深めていることが共通しています。また、上司による部下の能力を引き出すエンパワメントや、同僚による平等な対応といった支援的な行動が積極的に見られる傾向がありました。
上司・同僚の負担感を軽減することが重要
一方で、精神障害者と働く上司・同僚の約4割は、精神的な負担が大きいと感じていることも明らかになりました。これは、その他の障害や障害以外の事情がある部下・同僚と比べ、負担感が高いことを示しています。
負担感の原因としては、精神障害者への特別な配慮が、業務上の課題やコミュニケーション上の課題を引き起こし、負担感を増幅させていることが考えられます。
精神障害者雇用の成功に向けた提言
今回の調査結果から、精神障害者雇用を成功させるためには、周囲の負担を軽減することが重要であるということが改めて浮き彫りになりました。
具体的には、複数人で業務をカバーし合える体制を構築したり、業務カバーを評価・報酬に反映することで、業務の負担を軽減する必要があります。また、上司・同僚への学習支援や啓発を通して、マインドセットやリテラシー、適切な対応を学んでもらうことも重要です。
さらに、他部署との連携を強化し、精神障害者に対する理解を深めていくことも必要です。精神障害者の受け入れは、雇用側だけでなく、本人にとっても、福祉の支援、キャリア形成という三位一体の取り組みが必要となります。
職場の多様性包摂は、従業員の“はたらくWell-being”を高める
精神障害者雇用は、職場全体の多様性包摂を促進し、従業員の“はたらくWell-being”を高めることにつながります。しかし、安易な受け入れは、周囲にも悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。
本人の能力発揮やキャリア形成を目的として、外部支援機関と連携しながら、採用から受け入れまで、適切な体制を整えることが重要です。
精神障害者雇用、現場の課題と成功への道筋
今回の調査結果からは、精神障害者雇用が、従業員の意識や職場環境に多大な影響を与える可能性があることが明らかになりました。一方で、受け入れの成功には、多くの課題があることも浮き彫りになりました。
特に、上司・同僚の負担感という問題は深刻です。精神障害者に対する特別な配慮は、必ずしも負担軽減につながるとは限りません。むしろ、業務上の課題やコミュニケーション上の課題を生み出し、負担感を増幅させる可能性も孕んでいます。
しかし、一方で、上司・同僚の多くは精神障害者本人をサポートしたいという強い意志を持っていることも事実です。この意欲を無駄にすることなく、負担を軽減し、受け入れを成功させるためには、組織的な取り組みが不可欠です。
具体的には、多様な人材を受け入れるための研修や啓発、業務分担やサポート体制の整備、そして、外部支援機関との連携など、多角的なアプローチが必要です。
精神障害者雇用は、個人の能力を最大限に引き出し、多様性豊かな社会を築くための重要な取り組みです。しかし、その成功には、組織全体の意識改革と、現場の課題を解決するための具体的な施策が必要です。
企業は、今回の調査結果を参考に、精神障害者雇用に関する課題を認識し、受け入れ体制の強化に積極的に取り組む必要があります。そうすることで、精神障害者と、共に働く上司や同僚の双方が、安心して働き続けられる環境を構築することができるでしょう。