鳥類胚性幹細胞の発見
2025-10-07 12:51:03

卵黄成分が鳥類胚性幹細胞の培養に革命をもたらす

鳥類胚性幹細胞の新たな培養法を確立



熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)の永井宏樹リサーチスペシャリストとGuojun Sheng教授が、南カリフォルニア大学の研究者たちとともに、卵黄に含まれるオボトランスフェリンというタンパク質と低分子阻害剤を組み合わせることで、ニワトリを初めとする8種類の鳥類から胚性幹細胞を樹立し、長期間の維持培養に成功したことが明らかになりました。この研究の結果は、令和7年9月30日(米国東部時間05:00)に科学雑誌「Nature Biotechnology」に発表されました。

研究の背景


胚性幹細胞は、その自己複製能力と多様な細胞への分化能力により、再生医療や発生生物学の研究において重要な役割を果たしています。これまでは、哺乳動物に関する研究が進んでいた一方で、鳥類の胚性幹細胞に関する情報は非常に限られていました。特に、鳥類モデルのための最適な培養条件は未解明のままであり、研究が遅れていました。

研究の内容と成果


研究チームは、発生に関する理解が進んでいるニワトリに着目し、卵黄の役割を評価しました。彼らは、発生直後の有精卵からニワトリ胚を抽出し、幹細胞の分化を制御するための2種類の低分子阻害剤を加えた培地でこれを培養しました。しかし、最初は多能性遺伝子は発現したものの、長期間の維持には至りませんでした。

そこで、研究者たちは卵黄の重要性に気付き、卵黄成分を詳細に調査しました。その結果、オボトランスフェリンというタンパク質が細胞の増殖を助ける役割を担っていることが判明し、2つの阻害剤とこの成分の組み合わせがニワトリ胚性幹細胞の培養に必須であることを示しました。

さまざまな鳥類への応用


さらに、他の鳥類に関しては、異なる成分が追加で必要であり、各種ごとに培養条件は異なることが分かってきました。例えば、キジやアヒル、七面鳥では追加の阻害剤が必要であり、ビジネス用途では各種のアプローチが検討されています。研究から得られたニワトリ胚性幹細胞は、分化誘導培養によって三胚葉に分化する能力を示し、生殖細胞への分化能も持っていることが確認されました。

将来の展望


本研究により確立された胚性幹細胞技術は、家禽分野の研究や発生学に留まらず、絶滅危惧種の保全や再生に向けた新しい技術の発展にも寄与することが期待されます。この技術によって、従来の培養肉の生産技術や生物多様性の回復など、幅広い利用が可能になるでしょう。

結論


この研究は、今後の胚性幹細胞研究の新しい地平を切り開くものと考えられています。鳥類特有の生物学的特性に基づいた応用が進むことで、生命科学分野での重要な進展が期待されます。


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