エプソンとHKRITAが手掛ける新たな再生繊維
近年、環境問題への意識が高まる中、ファッション業界でもサステナビリティが重要視されるようになりました。そんな中、香港繊維アパレル研究開発センター(HKRITA)とセイコーエプソン株式会社が手掛けた、再生繊維の開発が注目されています。彼らは不要となったコットン生地から、まるでシルクのような光沢感をもつ新しい再生セルロース繊維の生産に成功しました。
この新しい再生繊維の開発に至った背景には、再生することの重要性が高まる社会状況があります。特に欧州では、廃棄された衣料品からの再生繊維への需要が増えており、その流れは世界的にも広がりを見せています。エプソンとHKRITAは、こうした社会的課題に対処するため、2024年に共同開発契約を締結しました。
新しい生産プロセス
この新しい再生セルロース繊維の開発において、エプソンの独自技術とHKRITAの専門知識が融合しました。具体的には、以下のステップで生産されます:
1.
解繊技術:不要なコットン生地を綿状に解繊し、扱いやすい形とします。
2.
溶解プロセス:解繊したコットンを特殊な溶媒に溶解し、さらなる加工が可能な状態にします。
3.
紡糸工程:凝固液からノズルを用いて吐出し、固化させて糸に仕上げます。
このプロセスで生成された再生繊維は、シルクのような滑らかさに加え、コットン本来の強度を持つことが期待されています。このため、高級ファッションアイテムへの使用が見込まれており、スカーフやネクタイ、スーツの裏地などに最適です。
環境配慮と今後の展望
また、今回の開発で生成された再生セルロース繊維は、通常は廃棄されることが多い短繊維からも生産可能なため、衣類における全体の再生率向上にも寄与することが期待されています。両団体の代表者も、今回の取り組みが今後の環境保護に大きな影響を与えると考えています。
HKRITAのCEOであるジェイク・コー氏は、「現実の問題を解決し、技術や製品をより良くすることに取り組んでいます。エプソンとの協業は、高品質な糸を生むための大きな期待を持っています。」とコメント。また、エプソンの細野聡氏も「この新技術により、コットンを無駄にせず再生できる。環境負荷の軽減につながると信じています。」と述べています。
展示会での発表
この結果は、2025年6月4日からベルギー・ブリュッセルで開催予定のTextiles Recycling Expo 2025にて展示される予定です。参加者は、HKRITAブース(2415)で新たに開発された再生セルロース繊維を見学できるチャンスがあります。
今後もHKRITAとエプソンは、両社の技術を融合しながら、衣類のリサイクルを進める新たな取り組みを続けていくことでしょう。この革新的なプロジェクトを通じて、持続可能な未来が実現されることを期待しています。