複数企業による生物多様性イニシアティブの開始
日本電信電話株式会社(NTT)を筆頭に、バイオーム、NTTコミュニケーションズなどの6社は、広範囲にわたる植生と生物の推定技術の開発に向けたプロジェクトに着手しました。この取り組みは、リモートセンシング技術を駆使し、衛星画像データを活用して生物多様性のモニタリングを行うことが目的です。
使用する技術とデータ
NTTグループが有する先進の衛星データ解析技術と、バイオームの持つ850万件以上のリアルタイム生物データベース「BiomeDB」を組み合わせることで、地域の植生や生物について詳細に把握できるシステムを構築します。この取り組みは、持続可能な社会を実現するための重要なステップとなるでしょう。
背景にある問題
世界経済の約半分が自然資本に依存している中、生物多様性の急速な劣化が問題視されています。2022年に開催された生物多様性条約第15回国際会議では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、世界各国で生物多様性保全への取り組みを強化する必要があるとされています。日本でも「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が策定され、多岐にわたる主体が連携し、事業の中で生物多様性を考慮することが求められています。
実証プロジェクトの内容
具体的には、NTTドコモの「ドコモ泉南堀河の森」と、アサヒグループの社有林「アサヒの森」が実証の場として選ばれています。これらの地域で、衛星技術を活用しながら生物や植生の状況を確認し、新たな手法を模索します。特に、NTTドコモでは、地域の生物多様性を可視化し、経年モニタリングを行うことで保全活動へとつなげる成果が期待されています。
企業の役割と今後の展開
各企業には、それぞれの役割があります。NTTはプロジェクト全体の推進、バイオームは生態系データの提供とサービス化の検討、NTTデータは高解像度衛星画像データの提供を担当。このように、各社がその強みを活かして協力し、持続可能な未来への道筋を模索しています。
また、今後は自治体や企業の生物多様性戦略策定の支援や、自然資本の定量評価に役立つプラットフォームの構築を目指します。これにより、オープンデータだけでは賄いきれないモニタリングや現地調査の負担が軽減されることが期待されます。
投資による新たな連携
さらに、NTTドコモ・ベンチャーズがバイオームへの投資を決定し、この連携を通じて新たな価値創造に向けた取り組みを加速させます。双方は生物多様性に寄与するビジネスや研究の連携を深める計画を進めており、将来的な共同開発の方向性が期待されています。
まとめ
この取り組みは、現在の環境問題への対応としてだけでなく、未来の持続可能な地域社会の構築に焦点を当てています。技術の進化とデータの融合により、より包括的な生態系保護が図られることを願っています。