特許権を取得した若者たちの物語
日本最大級の学生向けコンテスト「パテントコンテスト」が毎年、発明やデザインを追求する学生たちの新しい発見の場を提供しています。このコンテストには毎年1,500件以上の応募が寄せられ、その中から選ばれた優秀賞受賞者には特許権の取得をサポートする機会が与えられます。特許権が自分自身のものになる瞬間は、どれほど多くの努力と情熱によって築かれているのかを、今回の受賞者たちの体験からお伝えします。
苔玉スタンドの誕生
大阪府立東淀工業高等学校で学ぶ3人の高校生、大西海里さん、金本泰宇さん、金本泰秀さんが挑戦したのは「苔玉スタンド」。初めは先生からの依頼で始まり、苔玉を飾るためのポジショニングツールを作成することになりました。
大西さんは、「これは苔玉の水やりをサポートするためのもので、吊るしておけるデザインがポイントです」と説明します。このスタンドは、苔玉の状態に応じて水やりのタイミングを知らせてくれる仕組みとなっており、春の感覚での水やりタイミングが目で見てわかるユニークなデザインです。
開発のプロセスと苦労
彼らの開発は、夏休み中の放課後を使いながら進行しました。初めは和風のデザインを考えた3人ですが、工業高校ならではの視点で新しいアイデアを盛り込むことになりました。開発中の最大の課題は、苔玉の状態を測定する機能の開発だったのです。
金本さん兄弟(泰宇さん、泰秀さん)は、「水やりのタイミングが難しいことを知り、クリップのように位置を記録するアイデアが生まれた」と振り返ります。実際に試行錯誤を重ね、レーザー加工機を使用したりとこの時期の努力が特許取得の礎になりました。
特許出願の道のり
彼らはパテントコンテストへ応募し、驚くことに優秀賞を受賞しました。この結果、特許出願のステップへと進むことになり、さらに喜びが膨らみました。大西さんは「最初は信じられなかった。自分が発明したものが特許に!」と感激を語っています。
新たな体験として特許出願の手続きを始め、専門用語の難しさとの格闘や、請求項の文章化に苦労しました。彼らは集団で協力し意見を出し合い、指導してくれる弁理士の存在が大いに助けとなりました。
受験と卒業後
2024年には特許庁から「苔玉スタンド」の特許取得の通知が届き、彼らの努力が実を結びました。大西さんは短大で営業職を目指し、金本兄弟もそれぞれクリエイターとしての未来を追求中です。
学びと未来
「特許の取得を通じて、自分の言葉で考える力が身についた」と大西さんが語るように、この経験を通じて得たスキルは今後の社会生活に役立つことでしょう。そして3人の夢は続きます。商品化の際には、自分たちの手でパッケージやCM制作をしたいと語る彼らの未来に期待が高まります。
文房具好き女子も登場
次に登場するのは、デザインパテントコンテストで優秀賞を受賞した矢田美涼さん。彼女は日常品の改善を目指し、ノートPC用の外付けSSDホルダー「ClipDock SSD」を開発しました。文房具が大好きで、自分の必要を基にしたアイデアが生まれました。デザインのシンプルさや多様性を追求し、社会全体に利益をもたらすアイデアを考えました。
今後の展望
矢田さんも意匠権取得へ向けての努力を続けました。彼女の道のりは、弁理士との共同作業を通じて多くの学びがありました。「自分だけでなく、他人にも影響を与える権利を持つことの重みを感じた」と彼女は述べています。
メッセージ
両者のインタビューを通じて、「自分のアイデアを形にすることはとても身近に感じることができる」とのメッセージが伝わってきました。挑戦によって新しい発見をし、自身の成長に繋げることができるのです。特許権や意匠権は、個人が大きな夢をかなえるための第一歩になることを教えてくれます。これからの若者たちには、ぜひ挑戦してほしいです。