細胞性食品と国産牛
2023-07-03 10:00:03

細胞性食品研究の新境地、国産牛から多能性幹細胞を樹立

近年、細胞性食品、いわゆる培養肉の研究開発が世界中で盛んに進められています。その中で、日本の株式会社Hyperion FoodTechが国産牛の受精胚から多能性幹細胞を樹立したという新たな発表について注目が集まっています。この技術は、従来の方法とは異なり、リプログラミング技術や不死化技術を用いずに、数十代にわたり分化可能な細胞を作ることに成功した貴重な成果です。

培養肉は、牛などの動物から直接肉を取得するのではなく、細胞を培養することで肉を生産する新しい形の食品です。現在の培養肉は主に筋肉の組織から作られますが、国産牛から得た多能性幹細胞を原材料として使用することで、これまでにない革新的な「第二世代」の培養肉製造が期待されています。特に日本では、受精胚からの細胞樹立に関する報告がなく、Hyperion FoodTechの発表は業界において新しい基盤技術となる可能性を示唆しています。

BEEF細胞(Bovine Embryo-derived stem cell for Engineered Food)は、食用肉を構成する主要な細胞の一つである骨格筋細胞に分化することが可能で、他の細胞系への分化も確認されています。これにより、培養肉の安定供給が実現し、コスト的にも競争力のある製品の開発につながると期待されています。さらに、同社は培養液の開発や、大量培養技術の導入にも取り組んでおり、さまざまな細胞に分化する能力を持つBEEF細胞の特性を活かして、品質の向上を目指しています。

また、食の安全性についても細心の注意が払われており、過去のBSE問題を考慮したゲノム編集技術によるプリオン遺伝子が欠損したBEEF細胞の樹立も進められています。このような取り組みは消費者の信頼を得るためにも極めて重要です。さらに、大阪歯科大学との協働によるリスクアセスメントの実施など、食材としての安全性を確保するための努力が続けられています。

株式会社Hyperion FoodTechは、再生医療の知見を生かし、「より安心・安全」な培養肉の実現を目指しています。今後は、他の企業との共同研究や共同開発を通じて、培養肉産業のさらなる発展に向けた計画を進めており、日本から世界へと発信できる培養肉事業の成長を期待されています。この技術の商業化が進めば、日本の食文化にも新しい風が吹き込まれることでしょう。

そんな中、Hyperion FoodTechは、培養肉の原料となるBEEF細胞を有償で他企業に提供することも視野に入れており、将来的には、日本の技術が世界中の食品市場に広がる日の到来が期待されます。食と環境の問題を同時に解決するための細胞性食品の可能性が、今まさに広がろうとしています。

会社情報

会社名
株式会社Hyperion FoodTech
住所
奈良県奈良市
電話番号

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