がん遺伝子パネル検査の実施状況と課題についての調査結果
医療界においてますます注目されている「がん遺伝子パネル検査」について、株式会社インテージヘルスケアが全国の1,300人の固形がん治療医を対象にした調査が発表されました。この調査は2019年から行われており、今回で9回目となります。特に、がん遺伝子パネル検査の普及状況や医師が抱える課題について、詳細に考察されているため、読者の皆様にもぜひ知っていただきたい内容です。
認知率と実施状況の増加
調査によると、がん遺伝子パネル検査の流れに関する認知率や実施医師の割合は5年前と比べて増加しています。特にがんゲノム医療病院は、他の病院に比べて高い認知率を示しています。しかしながら、がん遺伝子パネル検査の保険診療が導入された2019年以降も、施設間での差異が残る結果となりました。
また、直近1年でがん遺伝子パネル検査を実施した医師の割合も増加していますが、依然としてがんゲノム医療病院とそれ以外の医療機関の間にはギャップが存在しています。これは、病院の方針や資源、また医師のレベルが影響している可能性があります。
患者への説明不足の現状
がん遺伝子パネル検査の適用となる患者のうち、実際に説明を受けた患者の割合は61%にとどまっています。このことは、適応となる人々が検査を受けるチャンスを失っていることを意味します。
医師がすべての患者に説明を行わない背景には、治療に繋がる可能性が低いという懸念が高く、またエキスパートパネル等の運営にかかる負担も影響しているとのことです。実際に、医師の48%が治療到達度に懸念を持っていると回答しており、これは患者にとって大きな障壁となっています。
医師の負担がもたらす影響
がんゲノム医療病院に属し、エキスパートパネルに参加している医師の95%が、パネル会議が負担だと感じていることが明らかになりました。さらに、約33%の医師が通常業務に著しい影響が出るほどの負担を感じているという結果も見られました。これにより、患者への説明不足は更に悪化する可能性があります。
治療選択肢の限られた患者が多く存在する中で、医師の負担軽減が急務となっています。こうした厳しい状況の中で、分散型臨床試験(DCT)などの新たな手法の導入が求められていますが、DCTに関する認知率はわずか8%にとどまっています。
今後の課題と改善に向けて
調査結果からは、がん遺伝子パネル検査の認知度や実施率は向上しているものの、依然として医療機関間での明確な差が存在することが分かりました。また、医師が治療到達度に不安を抱えているため、適応患者への説明が不十分となっている現状が浮き彫りとなりました。
このような背景を考慮し、医師の負担軽減や制度改革を含む根本的な改善策が必要とされます。がん遺伝子パネル検査が必要な患者がその機会を逃さないためには、医療現場と制度の両方での対策が求められています。今後も、インテージヘルスケアは医師と患者の双方からの視点で、がん遺伝子パネル検査の実態を引き続き調査し、改善に向けた活動を進めていく所存です。