乳がん患者と医師の治験に関する意識調査
株式会社ケアネットと株式会社イシュランは、乳がん患者と乳腺外科医を対象に「治験に関する意識調査」を実施しました。この調査から明らかになったのは、患者が治験に強い関心を持ちながら、医師には必要な情報が十分に伝わっていない現実です。
調査の目的と方法
調査は、乳がん患者134名および乳腺外科医62名を対象にインターネットで行われました。患者調査は2025年の初めに、医師調査はそれに続く期間に実施されたものです。目的は、治験に対する認識や期待の実態を把握することにあります。
主な調査結果
治験に対する知識と経験
調査によると、治験について知識を持つ乳がん患者は74%ですが、実際に治験に参加したことがあるのはわずか4%にとどまっています。対照的に、医師の73%が過去に治験に関与した経験があると回答しています。
情報のギャップ
驚くべきことに、患者の63%は主治医が治験情報を十分に知っていると考えていますが、実際に「知っている」と回答した医師は5%のみでした。このことは、医師が治験情報を充分に収集していない現状を反映しています。74%の医師が「ほとんど知らない」と回答していることから、情報の流通に大きな課題があることが明らかになりました。
提案意欲と参加意向の高さ
興味深いのは、医師の84%が患者の病状に合った治験について知った場合に提案する意向を示したことです。患者側も、治験情報を主治医経由で知った場合に参加を検討する意向が78%という結果を見せました。このように、双方が治験参加に前向きな姿勢を持っているにも関わらず、情報の乖離が問題となっています。
地理的制約からの脱却
患者の81%、医師の63%が日本国内の治験情報を積極的に求めており、地域に限定せず治験情報を広く知りたいというニーズが浮き彫りになりました。さらに、医師の90%は患者から治験参加について相談があった場合に前向きに対応すると回答しています。
調査結果から見える課題
この調査の結果、治験に関する情報が医師に届いていない現状が浮き彫りになりました。治験参加への意欲が高い患者と、それに応える準備がある医師がいるにもかかわらず、情報の流通不足が原因で治験の機会が失われているのです。
提言
治験参加の機会を最大化するためには、全国の治験情報を医師に効率的に提供する仕組みの構築が急務です。また、患者は自ら医師に治験参加を提案するなど、アクティブな姿勢を持つことが重要です。治験情報の整備が進むことで、治験のスピードが向上し、ドラッグラグやドラッグロスの解消にもつながるでしょう。
今後は、医師と患者が共に情報共有を進め、治験に関する理解を深めることが求められています。この調査結果が、治験参加のための新たな戦略を考える一助となることを期待します。