水産業に革新をもたらす、豊洲漁商のDX成功事例
株式会社豊洲漁商産直市場がデジタル化に挑戦し、受注業務の効率化だけでなく、売上アップにも成功した事例を紹介します。水産業は一般的にデジタル化が難しい分野とされており、その中で同社がどのように変革を遂げたのか、そのプロセスに迫ります。
きっかけと背景
豊洲漁商がDXに取り組むきっかけは、親会社であるオイシックス・ラ・大地株式会社との資本業務提携によるものでした。この提携を経て、豊洲漁商は自身の基幹システムの脆弱性に気付き、次世代に向けたデジタル化の必要性を強く感じました。これまでのオンプレミスのシステムでは対応しきれない課題が山積みであり、ECの必要性も感じていたのです。そこで、同グループのカラビナテクノロジーにシステム開発を依頼し、デジタル化への第一歩を踏み出しました。
システム開発の流れ
デジタル化のプロセスは大きく三つのステップに分かれています。まず、初めの3ヶ月間、カラビナテクノロジーと共同で要件を徹底的に整理しました。その後、要件に基づきシステムを6ヶ月かけて構築。微調整やテストを重ねる中で、特に水産業特有の商習慣を考慮に入れることが重要でした。
たとえば、魚は1尾単位で受注するものの、出荷時には重さで請求する必要があり、そうした細かい業務フローの実装にはかなりの困難が伴いました。実際に現場で仕入れを行うスタッフからのフィードバックを反映させることで、ようやくユーザビリティの高いシステムが完成しました。
導入後の変革
DX導入後、豊洲漁商の業務は著しく改善されました。特に情報共有のスピードは格段に上がり、仕入れをする際にも、どこに誰がいるか、どの商品がどうなっているかをリアルタイムで把握することができるようになりました。この変化により、情報の伝達漏れやヒューマンエラーが激減しました。
以前は現場で紙に記録していた仕入れ情報も、iPadからの入力で即座に事務所に共有されるようになり、業務の効率化が図られています。
最もインパクトがあったのは、社員が初めて育児休暇を取得できるようになったことです。水産業界において、これまで考えられなかった変化と言えます。このように、DXの成果は業務の効率化にとどまらず、働きやすい環境にもつながっています。
豊洲漁商の未来
今後、豊洲漁商はさらなる成長を目指し、全国の漁師や漁協との直結を強化し、より高品質で新鮮な鮮魚を提供することに注力する予定です。また、地元でしか手に入らない珍しい魚介類の取り扱いも続け、より多様な商品ラインアップを展開していく方針です。デジタル化を通じて、業務の効率化に加えて、顧客への商品の提供力を向上させることで、さらなる飛躍を期待しています。
豊洲漁商の挑戦は、水産業の未来を明るくする一歩となるでしょう。今後の展開に注目が集まります。