富士通、1万量子ビット超の量子コンピュータ構築に挑戦
近年、急速に注目を集めている量子コンピュータ。従来のコンピュータでは処理しきれない複雑な計算を高速で遂行することが期待されています。富士通がこの度発表した計画は、2030年度までに実用的な量子計算を実現するため、1万物理量子ビットを超える超伝導量子コンピュータの開発に取り組むというものです。
研究開発の背景
現代社会の様々な問題解決には、従来型コンピュータでは限界があるとされています。特に、FTQC(Fault-Tolerant Quantum Computer)を使用した場合には、100万物理量子ビットの実装が求められています。富士通はこれを見越し、2024年に大阪大学との共同研究で「STARアーキテクチャ」と呼ばれる高効率な量子計算アーキテクチャの開発を行い、すでに6万量子ビットを使用して現行のコンピュータを超える演算速度を確立しました。
さらに、理研との連携により、2023年には64量子ビットの超伝導量子コンピュータの開発に成功し、2025年には256量子ビット、2026年度には1,000量子ビットの実現を目指しています。これにより、量子コンピュータをさらに大規模化し、より実用的にするための基盤を構築しています。
NEDOとの協力による展開
この取り組みの一環として、富士通はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に採択され、産業化に向けた量子コンピュータの開発を加速させることになりました。本ビジネスは、国立研究開発法人産業技術総合研究所と理化学研究所との協力により、2027年度まで推進される予定です。
大規模化技術の開発
富士通が2030年度の目標を達成するためには、以下のいくつかの技術開発に取り組む必要があります。
1.
高スループット・高精度量子ビット製造技術の開発
- ジョセフソン接合を用いて、量子ビットの製造精度や周波数のばらつきの抑制を目指します。
2.
チップ間インターコネクト技術の開発
- 複数の量子ビットチップを効果的に接続するための技術に取り組みます。
3.
高密度実装・低コスト制御技術の開発
- 極低温での稼働を実現し、コストを削減する技術を模索します。
4.
量子エラー訂正向けデコーディング技術の開発
- エラー訂正の実現に向けたシステム設計を進めます。
今後の見通し
2030年度には、1万物理量子ビットを超える量子コンピュータの実現を見据え、富士通は多くの企業と共同で研究を進めます。さらに、2035年度にはより複雑な量子ビットチップのリモート接続を目標にしており、これにより1,000論理量子ビットの実現も視野に入れています。これらの技術開発は量子コンピュータの実用化、産業化を大きく推進することでしょう。
富士通のビジョン
富士通は、量子コンピュータの開発を通じて、世界の技術革新を先導し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。そのために、ソフトウェアからハードウェアに至るまでの幅広い領域での研究開発に継続的に取り組んでいます。この取り組みは、富士通の未来を形作る重要なステップであり、多くの企業との連携を通じて、より一層の進展が期待されます。
富士通の最新の取り組みは、量子コンピュータの実用化に向けた大きな一歩です。