健康食品市場の現状: トクホと機能性表示食品への信頼度が揺らぐ
1991年に制度化された「特定保健用食品(トクホ)」と、2015年に導入された「機能性表示食品」は、健康食品市場の成長を牽引してきました。国による安全性と有効性の審査や、科学的根拠に基づく機能性表示は、消費者の健康意識の高まりと相まって、これらの食品への信頼感を高めてきました。
しかし、近年、特定成分を含む食品や飲料による健康被害が相次いで発生し、状況は一変。消費者の意識にも変化が生じていることが、最新の調査から明らかになりました。
最新調査から見えてきた消費者の意識
日本インフォメーション株式会社が実施した調査では、トクホと機能性表示食品に対する消費者の意識に、興味深い変化が見られました。
1. 購入への影響: 男性は女性よりも表示を意識して購入する傾向が見られ、特に男性20代、40代では、トクホ、機能性表示食品ともに5割以上が「表示を意識して購入している」と回答しました。
2. 信頼度: 国の認可が必要なトクホの方が、機能性表示食品よりも信頼度が高いという結果になりました。しかし、健康被害に関するニュースの影響を受け、特に男性50代では、トクホに対する信頼度が低下していることがわかりました。
3. 購入量の推移: 過去半年における購入量の変化では、トクホ、機能性表示食品ともに「購入量は変わらない」との回答が最も多く、全体の6割を占めました。しかし、「買わなくなった」と回答したワースト1位は、両者ともに「飲料(お茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒーなど)」で、購入経験が最も多かったカテゴリーが上位にランクインしました。これは、健康被害に関するニュースが、消費者の購買行動に影響を与えていることを示唆しています。
4. 健康被害に関するニュースの影響: 健康被害に関するニュースが購買行動に影響を与える割合は約半数で、特に60代ではその影響が顕著でした。年代が上がるにつれて、健康被害に関するニュースが購買行動に影響を与える傾向が強まっていることがわかります。
5. ジェネリック医薬品への影響: ジェネリック医薬品については、健康被害のニュースによる影響は限定的でした。これは、薬代の負担軽減や薬剤師による安心感などが、ジェネリック医薬品への選択に影響を与えにくい要因として考えられます。
企業にとっての課題
今回の調査結果から、健康食品市場を取り巻く状況は、決して楽観視できるものではありません。企業側は、消費者の意識の変化を深く理解し、信頼回復に向けた対策を講じる必要があります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
透明性の高い情報公開: 製品の成分や製造過程に関する情報を積極的に公開することで、消費者の不安を解消し、信頼感を高めることが重要です。
安全性への取り組み: より厳しい品質管理体制を構築し、消費者の安全性を確保するための取り組みを積極的にアピールする必要があります。
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消費者とのコミュニケーション: 消費者の声に耳を傾け、製品に関する質問や不安に丁寧に回答することで、信頼関係を築くことが重要です。
まとめ
健康被害に関するニュースは、消費者の健康食品に対する意識を大きく変えつつあります。企業は、消費者の信頼回復に向けて積極的に行動し、健全な健康食品市場の発展に貢献していくことが求められます。
※本記事は、日本インフォメーション株式会社が実施した調査結果を参考に作成しました。