原発の安全性を高める新標準規格、IEC/IEEE 62582が発表

原発の安全性を守るための新しい取り組み

2012年9月19日、スイス・ジュネーブおよび米国ニュージャージー州ピスカタウェイにおいて、IEC（国際電気標準会議）とIEEE（アイ・トリプル・イー）が共同発表した新たな国際標準規格「IEC/IEEE 62582系」が、原子力発電所の安全性を一層高めるための注目すべき取り組みとして業界内外で話題となっています。この新ガイドラインは、原発で使用される電気設備機器の状態を効果的に監視し、かつ安全性を確保することを目的としています。

安全機能を維持する電気設備機器の重要性

原子力発電所において、電気設備機器は非常に重要な役割を果たします。これらの機器は、電力を供給するだけでなく、安全機能や事故軽減機能を担う計装・制御装置への信号の送受信を行うため、常にその状態が良好であることが求められます。しかし、従来の監視方法では、特定のケーブルの劣化を見逃す恐れがありました。

原発の作業員は、通常の稼働状況下で定期的に機器を試験していましたが、これではケーブルの状態監視が不十分でした。ケーブルの経年劣化や絶縁材の物理的な劣化、さらには環境による影響をすべて把握することは容易ではありませんでした。そこで、この新たなガイドラインの策定が必要とされていたのです。

具体的な技術とその適用

新標準規格「IEC/IEEE 62582系」により、実際の稼働環境下における機器の状態を定量的に評価するための特定の技術についての言及がされています。この規格は、原発の作業員、システム評価者、試験研究所、許可業者に向けて、安全に重要な電気設備機器の監視方法を提供します。

これにより、原子力発電所は「シビアアクシデント」発生時においても、設備機器の期待される機能を十分に確認できる情報を得ることができるようになります。この重要な試験を通じて、業界全体で安定した信頼性の向上が期待されます。米国の原子力技術委員会の長であるサティシュ・アガーワル氏は、「この標準は、新規および既設の設備機器の信頼性を向上させるための共通規格を提供するものです」と語っています。

世界中の原発への普及

IECとIEEEは、この新しい監視技術が世界各地で使われることを目指しており、特に新設および既設の原子力発電所における活用が期待されています。また、規格の整備により、異なる地域や法的規制における技術標準の調和が進むことになります。

この新たなアプローチにより、原子力発電所のデータは互換性を持ったものとなり、それぞれのサイトから集めた情報を統合することで、時間の経過に伴う状態の特性を把握するデータベースの構築も可能となります。これにより、原発の安全性向上に向けた取り組みが加速します。

さらに、IEC/IEEE 62582系には、今後新たに追加される予定の標準規格もあり、その範囲は広がっていく見込みです。これらの取り組みを通じて、原子力産業の安全性はさらに高まり、持続可能なエネルギー供給の確保に寄与していくでしょう。