ラグジュアリー市場の未来
2025-12-10 12:32:39
2025年のラグジュアリー市場が維持する安定と変革の兆し
2025年のラグジュアリー市場が維持する安定と変革の兆し
ベイン・アンド・カンパニーが発表した2025年の「グローバル ラグジュアリー市場レポート」によると、世界のラグジュアリー市場は引き続き安定を保ち、2025年には1.44兆ユーロ規模に達する見込みです。この数値は、地政学的な不確実性や消費者のニーズの急激な変化にもかかわらず、前年とほぼ同水準で推移することを示しています。
市場の安定性の背景
市場全体の消費は、一定為替ベースで前年と比べて+1%から-1%の範囲内での横ばいが予想されており、2026年に向けてはゆるやかな改善が見込まれています。しかし、安定した表面の裏では、消費者の価値観が大きく変化しています。つまり、「所有」から「体験」へのシフトが起こり、贅沢な商品を見せびらかすだけでなく、ウェルネスやつながり、自分へのご褒美といった“体験型の贅沢”が市場を再形成しています。
この背景には、高級宿泊やクルーズ、レストラン等の体験型サービスの需要が高まっていることがあります。これらのカテゴリーは、今後の市場成長を大きく押し上げる要因と考えられています。一方で、従来型の耐久財、特に高級車などは販売が伸び悩んでおり、セグメント構造が再編される過程にあります。
消費者動向の変化
個人向けラグジュアリー市場は、2025年には3,580億ユーロに達する見通しですが、2023年の3,690億ユーロや2024年の3,640億ユーロと比べると横ばいの状況です。超富裕層は高級品需要の支えとなっている一方で、準富裕層による買い控えが続き、伝統的なラグジュアリー消費には圧力をかけています。
ラグジュアリー消費の各セグメントでは、高価格帯の自動車が全体的な販売台数を減少させている中で、スポーツモデルが頑張っているのが特徴です。逆に、ヨットやプライベートジェットは力強い成長を示しています。また、高級レストランや特別な旅行を求める旅行者により、アジアや中東、リゾート地での需要が急増しています。このような新しい消費形態は、期待される特別な体験の提供に焦点をあてています。
課題と競争環境
一方、ラグジュアリー市場は課題に直面しています。特に個人向け市場は、マクロ経済や地政学的な不透明感から不安定な状況にあり、年末に向けての第4四半期の動向が結果に大きな影響を与える重要な時期となっています。
特に、ジュエリーやアイウェア、ビューティ製品が堅調に推移しておりますが、アパレルや靴に関しては、手頃な価格帯の製品が好調であり、消費者の節約志向を背景に成長しています。特に若者を中心に体験型の需要が高まっており、各ブランドはこの変化にうまく対応している状況です。
未来展望
長期的には、個人向けラグジュアリー市場は年率4~6%の成長が期待でき、2035年には5,250億ユーロから6,250億ユーロ規模に拡大すると予測されています。これは新たな消費者基盤の拡大と依然として高い需要が背景にあるためです。
しかし現在、ラグジュアリー市場は利益率が圧迫され、2009年水準まで低下しており、2025年のEBITマージンはおおよそ15~16%に達する見込みです。このような背景の中で、ブランドはより一層の効率化を図りながら、新たな消費動向に合わせて事業モデルを適応させなければならないでしょう。これからのラグジュアリー市場の成長は、単に商品を提供するだけでなく、消費者へ特別な体験を提供することに大きく依存していると言えます。
会社情報
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ベイン・アンド・カンパニー
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