東京大学とTOPPANホールディングスが開設する社会連携講座
東京大学とTOPPANホールディングスは、持続可能な社会の実現を目指し、「サプライチェーンの全体最適の科学と実践」という新たな社会連携講座を2024年に開設します。この講座は、生産から流通、小売、消費に至るサプライチェーン全体において、情報と物の流れを整えるテクノロジーの開発と社会実装を目的としています。
講座開設の背景
流通小売業界では、多くのステークホルダーが関与し、その中で製品の需要を正確に予測して生産計画を策定することが困難です。この結果として、製品供給の過不足が生じ、フードロスや配送に伴うCO2排出の増加といった問題が発生しています。既存の統計手法やAIを使用した需給予測は存在しますが、予測精度の限界も課題とされています。また、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷の可視化も未だ克服すべき課題です。
このような背景の中、東京大学とTOPPANホールディングスは、共同で講座を設立し、AI技術を核にした新たな手法の開発に取り組むことにしました。
講座の具体的な研究内容
共同開設される講座では、東京大学の松尾豊教授の専門知識とTOPPANグループの流通小売業向けのマーケティングノウハウを生かし、以下の研究を進めます。
1.
高精度な需給予測の技術開発
販促データや外的要因を統合し、高精度での需給予測を行うためのAI技術を開発します。
2.
需給変動要因の自動探索技術
自然言語処理を活用し、テキストデータから需給変動の要因を自動的に探し出す技術の構築を目指します。
3.
環境負荷の低減施策の研究
消費行動の環境負荷を明らかにし、その改善に向けた行動変容を促す施策を研究します。
講座の概要と期待される成果
この講座は、東京大学大学院工学系研究科に設置され、2024年10月から2027年9月までの期間にわたって運営されます。講座の目標は、サプライチェーン上での情報流通と物の流れを整流化し、フードロスやCO2排出量が削減された持続可能な社会の実現を図ることです。必要なデータ分析、予測、シミュレーション技術を構築し、実社会への実装を目指します。
松尾豊教授の意気込み
松尾豊教授は、「AI技術を活用し、サプライチェーン全体の最適化を進めていくことが、企業の競争力向上および環境負荷軽減に寄与することを大変嬉しく思っています」と語ります。TOPPANホールディングスとの協働が、持続可能な社会の実現に繋がることを期待しています。
過去の連携の成果
東京大学とTOPPANホールディングスの間では、これまでもAI技術に関する共同研究が行われてきました。小売業界における需要と供給の最適化に向けた売上予測AIの研究が進行中であり、両者の連携は今後の社会連携講座においても重要な役割を果たすでしょう。
このように、東京大学とTOPPANホールディングスは、サプライチェーン全体における情報化を進め、持続可能な社会実現に向けた重要な一歩を踏み出しました。