歴史を未来へ繋ぐ!市谷の杜 本と活字館の再生ストーリー
東京都新宿区にある「市谷の杜 本と活字館」は、地域のシンボル的存在であった「時計台」を復原し、新たな文化的施設として生まれ変わりました。2023年、同施設は第34回BELCA賞のベストリフォーム部門を受賞し、その意義深い再生プロジェクトが評価されています。
BELCAとは
BELCA賞は1991年に設けられ、既存建築物の長期的な維持保全や優れた改修工事を行なった物件に対して贈られる表彰制度です。この賞には【ロングライフ部門】と【ベストリフォーム部門】の2つがあり、特に卓越した業績が選ばれます。
プロジェクトを設計した株式会社久米設計は、歴史的な建築物の価値を尊重しながら、未来に向けた再生を目指しました。その成果が今回の受賞に繋がったのです。
設計者の想い
設計者は「市谷の杜 本と活字館」が地域の記憶を継承するための重要な場所になることを願い、地域の皆々様と共にこのプロジェクトを進めてきました。
設計者は、この建物がただの復原にとどまらず、文化の発信拠点として親しまれることを期待しています。そのためには、地域との強い結びつきが不可欠だと考えています。
建築概要
- - 名称:市谷の杜 本と活字館
- - 所在地:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
- - 建築主:大日本印刷株式会社
- - 設計者:株式会社久米設計
- - 施工者:株式会社フジタ
- - 延床面積:836㎡
- - 階数:地上1階・地下1階
- - 構造:RC/基礎免震
- - 竣工年:2020年5月
- - 受賞歴:第34回BELCA賞ベストリフォーム部門、 第22回日本免震構造協会賞業績賞
復原と文化の創出
「市谷の杜 本と活字館」は、大正末期に創建された建物で、当時の面影を守りつつ、新たな文化的価値を創出することを目指しました。
この復原プロジェクトでは、現存する建材の調査を徹底的に行い、創建当初のデザインや装飾をできる限り再現。特に内装の漆喰装飾や木製建具、モザイクタイルの床などは、綿密な調査を経て復原が実現しました。
また、この建物には基礎免震技術が採用されており、外部の震災にも耐えられる設計がなされています。今後も地域の歴史を背景に、文化の発信を行なっていくことが期待されます。
新たな役割
市谷の杜 本と活字館は、その名の通り、活版印刷技術の展示や体験を通じて、地域の文化を後世に伝える役割を果たすことを重視しています。
さらに、地域全体の再開発に対応した建物の曳家工事も行われ、新しい都市の構造に適合しています。これにより、昔の姿を守りながらも、現代と調和した新しい文化施設としての道を歩んでいます。
未来へ向けて
「市谷の杜 本と活字館」がその存在を通じて、地域の歴史と文化を次世代へ継承し、さらに新たな文化が生まれることを期待しています。建築を通じた社会貢献の姿勢は、地域の皆に愛される拠点となるだけでなく、日々の活動を通して多くの人々に刺激を与えるでしょう。
このように、市谷の杜 本と活字館は単なる建築の再生に留まらず、地域文化の受け継ぎと新たな創出を目指す重要なプロジェクトです。