地中海における人道的活動の危機
国境なき医師団(MSF)は、2023年9月16日に地中海での移民や難民の捜索救助活動を停止することを発表しました。この決定は、イタリア政府の法律および政策の影響により、同団体の活動の継続が不可能になったためです。名高い捜索救助船「ジオ・バレンツ号」の運航も同時に停止され、その運命は厳しいものとなりました。
地中海中央部の危険な航路
2021年6月以降、ジオ・バレンツ号は地中海で1万2675人を救助し、その活動は多くの命を救ってきました。しかし、地中海中央部では依然として深刻な状況が続いており、2014年以来、3万1000人以上の人々が行方不明または死亡しています。この地域は、移民や難民にとって最も危険な航路の一つであり、多くは生命を賭けて欧州を目指しています。
イタリアの厳しい制裁と新政策
イタリアにおける厳しい制裁が、さらに人道的支援を脅かしています。MSFは過去2年間にわたり、ジオ・バレンツ号に対して四度も制裁を受け、合わせて160日間にわたり港に留め置かれました。これらの制裁は、今月からさらに厳格化され、「ピアンテドージ令」が新たな回数の制裁を可能にしています。この法律は、人道的な捜索救助活動を妨害するものとして、多くの批判を集めています。
救助から遠く離れた港へ
イタリア政府は、救助された人々が上陸する港を遠くの北部に指定するなど、その条件を厳しくしています。例えば、2023年6月には、最大600人を乗船可能なジオ・バレンツ号に対し、わずか13人の生存者を降ろすために、1,000キロ離れたラ・スペツィアへ向かうよう指示しました。これにより、救助活動が後手に回り、活動の効率が著しく低下してしまいました。
MSFの取り組みと立ち向かう姿勢
MSFの活動責任者フアン・マティアス・ギルは、イタリアの制度の非合理性を指摘し、今後もどうにか活動を再開し、人々の命を救うために努力し続ける意向を示しました。彼は、「地中海を渡る人々の命を無視する今の状況は許されない」と強調しています。これは、移民政策がどれだけの苦しみをもたらしているかの証明でもあります。
人道は尽きない
この痛ましい状況に対し、MSFは人道を優先する姿勢を崩さず、救助活動を再開するための努力を続けるとしています。地中海での日々の活動は、ただのファインダーのマークではなく、多くの命に直結しています。
MSFが直面するこの試練は、法的手段を駆使するものの、いまだに満足のいく成果を得られずにいます。欧州委員会への苦情も出されているものの、その返答は未だに得られていません。これからも、活動にかける情熱と人道の精神で、人命救助に取り組んでいく所存です。