新奇材料開発の展望
2024-09-02 16:06:33

ハイエントロピー型金属テルライドのイオン拡散メカニズムがもたらす新奇材料開発の展望

ハイエントロピー型金属テルライドにおけるイオン拡散メカニズムの解明



東京都立大学大学院理学研究科の研究グループが、ハイエントロピー型金属テルライドのイオン拡散に関する重要な知見を発表しました。この研究は、多様な元素が固溶したハイエントロピー型結晶における拡散機構を解明するもので、特に電池材料としての応用が期待されています。

研究の背景


ハイエントロピー型金属テルライドは、例えばAgInSnPbBiTe5のように、多種の元素が結晶構造の中に均一に分布するため、特異な物理的特性を持っています。これにより、高い融点、高強度、そして高いイオン透過率が求められ、電池のセパレータなどへ応用が期待されています。しかし、そのイオン拡散メカニズムは長い間不明のままでした。

研究のポイント


この研究チームは、先進的な分子動力学シミュレーションを用いて、次の重要な発見をしました:
1. フレンケル欠陥の形成:電荷が小さく、サイズも小さいカチオンがフレンケル欠陥をより多く形成することがわかりました。これにより、イオンの拡散が著しく促進されることが明らかにされました。
2. 協同的拡散:フレンケル欠陥の形成を介して、大きなサイズと電荷を持つカチオンも、他のカチオンと協力して拡散が進むことが示されました。これにより、より効果的なイオン運動が可能となります。

研究の詳細


カチオンの動き


研究では、AgInSnPbBiTe5のカチオンの平均二乗変位を調査しました。結果として、ハイエントロピー化された材料では、カチオンが時間と共に徐々に移動することが確認され、物質の特性を向上させる要因となっていることが明らかにされました。

フレンケル欠陥の役割


フレンケル欠陥によってカチオンが結晶中に移動するメカニズムが、シミュレーションを通じて詳細に解析されました。異なるカチオンのフレンケル欠陥形成頻度も解析され、特にIn+が高い頻度でこの欠陥を形成することがわかりました。電荷の小ささが、これらの欠陥形成を促進する重要な要素であることも示されています。

協同的な拡散機構


さらに、研究チームは、協同的拡散のメカニズムを評価しました。フレンケル欠陥によるカチオンの動きは、互いに影響し合いながら行われ、これによって大きなカチオン同士の拡散も可能となっています。この発見は、複雑な多成分系で見られる特異な現象として位置づけられます。

研究の意義


本研究の成果は、次の世代の高性能材料がどのように設計されるべきか、またそれを活用して新しい技術が生み出されるのかを示す指針となりました。例えば、リチウムイオン電池に利用される場合、高いイオン透過性を持ちながら安定した運用が可能です。

今後の展望


将来的には、本研究によって示されたメカニズムをもとに、より高性能なリチウムイオン電池のセパレータや他の電子デバイスへの応用が期待されています。これにより、エネルギー技術や材料科学の分野における新たな進展がもたらされることが見込まれています。

発表論文


この研究成果は、2023年8月28日付で「Journal of Alloys and Compounds」に発表されました。

文献情報

このように、ハイエントロピー型金属テルライドのイオン拡散メカニズムを理解することが、新材料開発に新たな道を開くことになります。


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