新たな挑戦!ズワイガニ育成の最前線を探るカニプロジェクト
城崎マリンワールドは、ズワイガニの育成に取り組む「カニプロジェクト」を2017年にスタートしました。地域の特色を生かしたこのプロジェクトは、水族館で初となるカニの育成の実現を目指しています。今回は、この壮大な試みの詳細と、その背景に迫ります。
カニプロジェクトの誕生
ズワイガニは城崎地域で『松葉がに』と呼ばれ、地域特有の貴重な水産資源です。しかし、卵から成熟に至るまでにかかる時間は約10年とされ、その過程を見た人はほとんどいません。「どのように成長するのか見たい」という素朴な好奇心が、この冒険の始まりでした。
卵を1回に産む数は約5万粒。しかし、成長し大人のサイズに達する確率は極めて低く、これまで水族館でこの成果を達成した例はありません。この挑戦の成功率はわずか0.0001%とも言われています。
稚ガニの誕生と課題
プロジェクトでは、ズワイガニはまずプレゾエア幼生、続いてゾエア幼生、メガロパ幼生と成長していきます。最初のゴールである稚ガニの誕生に成功したのは2018年のことです。この年、約600匹の稚ガニが誕生しました。しかし、その後は成長しないという新たな課題が待ち受けていました。
共食いや脱皮失敗による死亡率の上昇が原因で、すべての稚ガニが亡くなってしまったのです。この苦境を経て、プロジェクトチームはより効果的な育成方法を模索し始めました。
成長のための新たな取り組み
7年を経て、プロジェクトは新たな転機を迎えます。成長を促進するために、数々の試行錯誤を重ねました。例えば、共食いを防ぐためにそれぞれのカニを個別のプラスチックケースで育てる方法を取り入れました。その様子はまるで「カニのアパート」といった光景です。これにより共食いが解消され、エサやりや掃除といった日々の作業には多大な労力を要しました。
また、水温の管理も鍵を握っていました。ズワイガニは成長段階によって移動する水温域が異なることから、過去のデータを参考に水温をより低く保つことが新たな課題として挙げられたのです。
新記録達成—成長の証
その取り組みの甲斐あって、2024年11月、ついに新記録となる甲幅3.5センチに到達したズワイガニが誕生しました。これまでの苦労を大きく実感する瞬間であり、成長の証明でもあります。
会話のある水族館を目指して
2024年7月、城崎マリンワールドの展示エリアはリニューアルされ、カニプロジェクトに特化したコーナーも設けられました。お客様は繁殖された稚ガニを直接見ることができ、専門の飼育員による音声ガイドも導入されています。これにより、訪れる人々とカニの成長に関する深い会話が生まれています。
今後のカニプロジェクトでは、甲幅10.5センチの松葉がにの育成に挑戦するだけでなく、次世代へとつながる累代飼育にも取り組む意向です。お客様と共に、新たな発見の物語を育んでいくことを目指しています。
城崎マリンワールドは、単なる水族館にとどまらず、体験型の場所として多くの魅力を提供しています。今後のカニプロジェクトにも大きな期待が寄せられています。