看護過程に基づく化粧ケアの新たな価値
高齢化社会の進行と共に、療養者や高齢者の生活の質(QOL)を向上させる取り組みが求められています。この文脈で、株式会社RingsCare(本社:東京都日本橋)と順天堂大学大学院医療看護学研究科の連携により、化粧ケアが療養者の生きる力を引き出すメソッドであることが示されました。研究成果は、日本看護科学学会誌に掲載されており、その内容には多くの示唆が含まれています。
化粧ケアの研究背景
日本は世界的に見ても高齢化が進展しており、医療の高度化に伴い、疾患と共に生活する療養者のQOL向上がますます重要になっています。従来の医療・介護現場では、外見、特に化粧は華美なものや治療に不要なものとして排除されがちでしたが、化粧には心理的・社会的な効果が存在します。しかし、化粧がケアとしてどのように機能するのかについての具体的な研究は少なく、その必要性が感じられていました。そこで、株式会社RingsCareと順天堂大学が共同で実施したこの研究は、化粧ケアにおける看護過程の重要性を明らかにするためのものでした。
研究方法と結果
本研究では、化粧ケアに関する教育を受けた看護師10名を対象に、非構成的なインタビューが行われました。その結果、看護師の行動と意図は看護過程の5つのステップ、すなわちアセスメント、看護診断、計画、実施、評価と類似していることが明らかになりました。具体的には、以下のようなプロセスが確認されました:
1.
アセスメント:化粧ケアに適した対象を選ぶための情報収集を行います。
2.
看護診断:課題を抽出し、個々のニーズに基づいた化粧ケアの提案を行います。
3.
計画:対象者一人一人の状態に応じた具体的なプランを作成します。
4.
実施:コミュニケーションやタッチングを取り入れたケアを行い、自己ケアを支援します。
5.
評価:施術の効果をチーム内で評価し、今後の方針を定めます。
化粧ケアの意義
研究の結果、化粧ケアは療養者や高齢者の自己肯定感を高め、尊厳を保持しながら、個人と社会を結ぶ役割を果たすことが示されました。つまり、外見を整えるプロセスを通じて、療養者は自己実現を図ることができるのです。このように化粧ケアは身体的なアプローチに留まらず、心理的や社会的なつながりを強化する重要な手段であるといえるでしょう。
今後の展望とオープンイノベーション
RingsCareは、今後も大学や研究機関との連携を深め、研究に基づいたサービスの開発を進めていくことを目指しています。オープンイノベーションを通じて、多様な知見を融合し、さらなる革新を目指します。最終的には、人間の尊厳を保ちながら、包括的で質の高いケアを提供することがRingsCareの使命です。
本研究の成果は、高齢者だけでなく、すべての療養者に新たな可能性をもたらすことでしょう。今後のさらなる研究と実践の展開に期待が寄せられています。