土砂災害リスクをAIが解析！専門家レベルの評価が可能に

土砂災害リスクをAIが解析

国際航業株式会社の研究グループが開発した新しいマルチモーダル人工知能（AI）システムは、ドローンなどで撮影された土砂災害の画像を専門家レベルで分析することができる画期的な技術です。著名な研究者たちが集まったこのグループは、今後の災害対応における意思決定支援を大幅に改善する可能性を秘めています。

この研究の目的は、土砂災害時の迅速かつ安全なリスク評価を実現し、限られた専門家リソースを効率的に活用するための新たな枠組みを提供することにあります。特に近年、気候変動の影響で自然災害が増加している中、適切なリスク評価が命を救うことに繋がります。

研究の背景

気候変動による異常気象は、地滑りや土砂崩れなどの自然災害の頻発を引き起こしています。災害現場では、被害の範囲や原因を正確に評価することが重要ですが、これを行えるのは通常、専門的な知識を持つ人に限られています。専門家の数は限られており、特に大規模な災害時には即時の判断が難しくなることがあります。

さらに、土砂災害は複雑な要因が交錯するため、高度な能力が必要とされます。航空画像は豊かな情報を提供しますが、その解釈には多くの専門的な知識が求められるため、これを自動化することは難しいという課題がありました。

開発されたAIシステムの特長

本研究で開発されたAIは、「土砂災害の種類や原因、観察事項、将来のリスクを説明してください」というプロンプトを与えられると、迅速に分析結果を生成します。実際に、災害画像に基づいて土砂災害を「Landslide」として特定し、原因を「人為的活動と自然侵食」と推測しました。これにより、専門家がすぐに現状を把握できるようになります。

研究の手法と成果

本研究では、専門家の知識をデジタルデータに変換し、AIによる分析を行うための基盤を構築しました。まず、過去の土砂災害現場の画像を専門家に提示し、その観察内容を音声記録として蓄積し、テキストに変換して整理しました。このデータを元にAIモデルを効果的に訓練しています。

また、二つの異なるアプローチでAIシステムを構築しました。視覚的質問応答（VQA）モデルと大規模言語モデル（LLM）を組み合わせる方法、そして画像とテキストを同時に処理するエンドツーエンドアプローチです。これにより、精度の高い土砂災害評価が可能になります。

今後の展開

今回のAIシステムは、実用的なシナリオでの活用が期待されています。例えば、航空写真や衛星画像からの自動スクリーニング、大規模データの分析により高リスク地域の特定や、現場での迅速な意思決定を支援します。

岡谷貴之チームリーダーは、「この技術が土砂災害対応の迅速化と安全性の向上に寄与することを願っています」と述べています。国際航業は引き続き防災分野を革新する技術の開発を進めており、社会に貢献するための取り組みを強化していきます。