アマダによる製造改革とDXの実現
株式会社アマダ(神奈川県伊勢原市)は、近年の労働市場の変化や地政学的リスクに対応し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した革新的な製造業務の改革を進めています。今回は、彼らが実施した生産能力の向上戦略を詳しく紹介します。
現代の製造業が直面する問題
製造業は、少子高齢化の進行により労働力の減少が深刻化し、急速な短納期化や部材供給不足という新たな課題に直面しています。このような環境下、アマダは生産方式の見直しに取り組む必要がありました。
生産能力の強化
アマダの主力工場である富士宮事業所では、2020年に基幹モジュールの供給を目的とした「モジュール工場」を新設しました。この工場は、国内外の拠点への供給の基盤となるだけでなく、近郊に「アマダサテライトパーク」を設立することで、サプライヤーとの連携強化を図りました。これにより、生産効率が向上し、生産コストの削減も実現しました。
さらに、DXの導入によって、主力ファイバーレーザマシンの生産能力を約30%増強し、受注から納品までのリードタイムが20%短縮される見込みです。このような成果は、単に生産能力の向上だけでなく、全体的な業務効率の改善にも寄与しています。
生産方式の革新
アマダの新たな生産方式として、屋台ブース生産方式が採用されています。この方式は、各ブースがミニファクトリーの役割を果たし、必要な部品をJIT(ジャスト・イン・タイム)で供給する仕組みです。しかし、マシンの多機能化が進む中、手待ちや管理工数が増えてしまう課題も浮上しました。
そこで、より効率的なブースライン方式を取り入れ、工程を細かく分けることで、作業の標準化を進めています。これにより作業習熟度が向上し、リードタイムが短縮されました。また、ブースの配置にも工夫がなされ、ブース間の配膳エリアの共有化が進み、面積生産性は約30%向上しています。
インフォメーションシステムの導入
アマダは独自に「AM-HIT's」という生産情報システムを開発しており、このシステムは受注情報をもとに組立日程を自動生成します。新たに導入された「APEX」は、このシステムをさらに進化させ、ユーザーのニーズに柔軟に対応できる環境を整えています。
また、サプライヤーとの連携強化を目的に「アマダサプライヤーポータルサイト」を新設し、生産計画や在庫情報をリアルタイムで共有できる仕組みも整えました。このように、デジタル技術の活用が間接業務の効率化に寄与しています。
次世代のモノづくりと未来への展望
アマダは中期経営計画2025において、長期的な成長を見据えた戦略を展開しています。地道な製造改革とサプライチェーンの強化を進めつつ、グローバルな供給体制の構築に注力しており、今後も継続的なDX推進に取り組むことを表明しています。
彼らの将来のビジョンは、環境に配慮した持続可能な製造体制を確立し、20230年の長期ビジョンに向けて、さらなる進化を遂げていくことでしょう。アマダの取り組みは、製造業の未来を切り開く重要なステップとなり得るのです。