野球におけるデータ革命を読み解く
2023年8月19日、広尾晃氏の新著『データ・ボールアナリストは野球をどう変えたのか』が発売され、野球ファンから大きな注目を集めています。この本は、近年の野球界におけるデータ分析の重要性と、その影響を深掘りしています。著者は、現場で実際にデータを活用しているアナリストたちを取材し、彼らの視点から野球の進化を描き出しました。
野球は進化した
伝統的に「努力と根性」のスポーツとされてきた野球ですが、今日ではその姿が大きく変わりつつあります。甲子園での熱戦が繰り広げられる中、野球はもはやただの肉体的な競技に留まらず、データに裏打ちされた戦略や戦術が存在します。選手の評価基準も変革を遂げており、従来重視されていた打率や打点、勝利数といった指標は、もはや主要な評価軸とはみなされなくなっています。
驚くべきことに、「安打は偶然の産物」との考え方が一般化しているのです。現在、メジャーリーグでは本塁打が選手評価の中で最も重要視されており、その本塁打を打てる選手には共通する特徴が存在します。それは、打球速度の速さです。この打球速度を上げるためにはスイングスピードを高める必要があります。そして、メジャーリーグではスイングスピードが優れた能力として重視されています。実際、2023年のメジャーリーグで顕著だったのが、大谷翔平選手やロナルド・アクーニャJr.選手です。この二人は、そのスイングスピードの速さが評価され、共にMVPに選出されました。
アナリストたちの役割
「データ・ボール革命」を推進するにあたり、アナリストたちが果たした役割は大きいです。彼らは元々、統計分析や独自の指標を駆使してチーム戦略を構築していましたが、今ではバイオメカニクスを取り入れたトレーニング支援にも関わるようになり、選手やチームのパフォーマンス向上に寄与しています。このような取り組みはプロ野球だけではなく、アマチュアスポーツにも広がり、昨年の夏の甲子園で優勝を果たした慶應高校のように、データ分析がアマチュアチームにも浸透しているのです。
野球界の未来
本書では、アナリストたちへのインタビューを通じて、野球界における近年の動向を詳しくレポートしています。データ化の進行によって、野球は新たな地平に達しつつあり、その結果、選手たちの能力やチームの戦略も大きく変化しています。
著者の広尾晃氏は、立命館大学を卒業後、広告制作や旅行雑誌編集長を経てスポーツライターとして活動を始めました。彼は「野球の記録で話したい」というブログを運営し、著作には『巨人軍の巨人 馬場正平』や『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』など多岐にわたるテーマを扱っています。
この書籍は、野球のデータ革命を知りたいすべてのファンにとって必読の一冊です。野球の未来を見つめる上で、欠かせない視点を提供してくれることでしょう。