宇宙開発の新たな一歩
2025年10月26日、日本大学理工学部が開発した超小型衛星「てんこう2」が、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機に搭載され、ついに宇宙に向けて打ち上げられました。このミッションは、Space BD株式会社による衛星放出サービスの一環であり、宇宙産業における新たな展開が期待されています。
H-SSODによる新たな衛星放出技術
「てんこう2」は、HTV-Xに搭載された超小型衛星放出機構「H-SSOD」が用いる初の衛星です。このシステムにより、HTV-Xは国際宇宙ステーション(ISS)から約500kmの高度で衛星を放出することが可能となります。これは従来の放出方法に比べ、衛星運用期間が延長されることを意味し、超小型衛星の活用がさらに広がることが期待されます。
特に、「てんこう2」は、地球低軌道環境の観測を目的としたミッションを担っており、高エネルギー粒子の観測を行います。これらは宇宙の環境や宇宙線の理解において重要なデータを提供することでしょう。さらに、最新のマイクロコンピュータと高解像度カメラを搭載しており、宇宙通信技術の確立にも寄与することになります。
日本大学とSpace BDの連携
このプロジェクトは、Space BDと日本大学との業務提携に基づいて進められています。Space BDはJAXAとの契約のもと、HTV-X衛星放出ミッションの実施企業として選ばれ、衛星引渡しからミッションユーザーの開拓までを担当しています。これは双方にとって初の協力事例です。
奥山教授は、「H-SSODを利用した放出は、科学と芸術、教育を融合した取り組みであり、宇宙を舞台にした新たな学びの場を提供することを目指しています」と語っています。このように、「てんこう2」プロジェクトは単なる衛星打ち上げを超えて、宇宙を活用した教育やアートにまで視野を広げています。
宇宙×エンタメの新たな取り組み
「てんこう2」に搭載されるミッションの一つ、「N.U Cosmic Campus(NUCC)」は、宇宙をテーマにしたアートプロジェクトです。ここでは、世界中の人々と協力して楽曲を作成したり、絵を描いたりする活動が行われ、参加者がまるで宇宙と一緒に学び、創造するキャンパスのような体験を提供することを目指しています。
このようなプロジェクトは、科学と芸術の融合を新たな形で実現し、多様な人々を巻き込む可能性を秘めています。宇宙開発の分野においても教育の視点を持つことが重要であることを、再認識させられます。
期待される成果
「てんこう2」が宇宙空間で果たす役割は多岐にわたります。高エネルギー粒子の観測はもちろんのこと、地球観測や新しい宇宙通信技術の開発などが期待されています。また、日本大学の学生たちが直接関与できるこのプロジェクトは、次世代の科学者やエンジニアを育てるきっかけともなります。
このように、「てんこう2」を通じて新たな宇宙開発の可能性や教育の重要性が示されています。今後、このプロジェクトから生まれる成果が、我々の宇宙への理解と利用にどのように貢献するのか期待が高まります。