鹿児島県錦江町が目指す再造林率100%への挑戦と連携の詳細

日本の森林が抱える現状と課題

鹿児島県大隅半島の錦江町は、約76%を森林が占める地域です。しかし、森の保全が進まない現状があります。令和6年度の再造林率は約35%にとどまり、管理が行き届かない森林が増加しています。本町は、この問題を解決するために2023年6月に「森林の整備保全に関する条例」を施行し、放置林の増加防止に向けた取り組みを進めています。

協定の概要

2023年10月1日、錦江町、大隅森林組合、日本森林アセット株式会社の3者は「森林に関する包括連携協定」を締結しました。この協定の目的は、伐採跡地の再造林率を100%に向けて進めることです。各者の役割は以下の通りです。

- 錦江町（行政）：連携協定の運用や森林整備費用の助成を行います。
- 大隅森林組合（林業事業者）：伐採跡地での再造林を担当し、その管理を受託します。
- 日本森林アセット株式会社（民間企業）：伐採跡地の購入や再造林にかかる経費の負担を行い、J-クレジットを創出します。

課題と解決策

国土交通省の調査によると、日本では約58%の森林所有者が経済的負担や後継者不足から所有権を手放したい意向を示していますが、所有権や境界が不明確なため、事業者による買い取りが困難な現状があります。このため、錦江町では地方の森林管理モデルを更新し、持続可能な森林づくりを進めていく必要があります。

「日本森林アセット」は、住友林業と三井住友信託銀行の共同出資によって設立され、森林の売却を希望する個人や法人から伐採跡地を購入し、2030年までに3,000haの再造林を目指しています。この仕組みを通じて、地域の森林管理の効率化や、小規模林の集約化を図り、再造林を進めることが可能となります。

未来への視点

錦江町が目指す再造林率100%の実現には、地域の林業従事者の育成も欠かせません。協定を通して、再造林に関わる人材を育てるための支援が行われ、地域経済の発展と環境保全が同時に進んでいくことでしょう。

また、J-クレジット制度は財政的な支援源としても活用され、持続可能な森林経営が実現する期待が高まっています。政府の支援を受けながら、民間企業と地域行政が連携することで、全国に先駆けた森林管理のモデルを示すことができるのです。