岡山大学が次世代有機高分子系複合熱電変換材料の設計指針を確立
2025年10月18日、国立大学法人岡山大学が次世代の有機高分子系複合熱電変換材料に関する新しい設計指針を発表しました。これは、排熱を電気に変換する技術の進展が持つ重要性に応じ、特に温度差からの電圧生成を可能にするために開発されました。
研究の意義と背景
熱電変換材料は、未利用の排熱を効率的に電気エネルギーに変換する技術として注目を集めています。しかし、性能向上においては、ゼーベック係数と導電率という二つの指標のトレードオフが問題とされていました。両者を同時に向上させることが難しく、これが効率化の障害としてきました。この問題に対し、岡山大学の研究チームは系統的なアプローチを試み、最適な設計指針を明確にすることに成功したのです。
有機高分子系の強み
有機高分子系複合熱電変換材料は、従来の無機材料に比べて軽量であり、柔軟性も備えています。これにより、さまざまな用途での適用が可能です。研究では、異なる材料が接する界面におけるエネルギー障壁を0.05〜0.1 eVの範囲に最適化し、低エネルギーキャリアを効果的に遮断して高エネルギーキャリアのみを選択的に輸送する方法が提案されました。この「エネルギーフィルタリング効果」により、熱電変換特性を向上させることができるとされています。
研究成果と応用
本研究は、エチオピアや中国、シンガポールの研究機関との国際共同研究として行われ、その成果は2025年9月に英国王立化学会の学術雑誌に掲載されました。この設計指針は、ウェアラブルデバイスやフレキシブルセンサー、自立電源デバイスなど、多岐にわたる応用に寄与することが期待されています。特に、150℃以下の未利用排熱回収分野での可能性が注目されています。
未来の持続可能な社会へ
この研究によって確立された設計指針は、持続可能で低炭素な社会の実現に向けた新たな基盤を築くものです。岡山大学の林靖彦教授は、「これまでの研究成果を体系化し、社会への実装を進めることが重要です」とコメントしています。本研究は、将来的な技術革新に向けた貴重な一歩と言えるでしょう。
さらなる情報
詳しい研究内容や論文情報については、岡山大学の公式サイトで確認できます。熱電変換技術は環境問題解決を目指す上で、今後の研究がますます重要な役割を果たすことになるでしょう。