量子物質の新たな発見が開く未来の扉
国立大学法人岡山大学を中心とした研究チームは、電子強誘電体として知られるルテチウム鉄酸化物(LuFe2O4)が、テラヘルツ光により大規模な電気分極変化を示すことを発表しました。この発見は、高速エレクトロニクスデバイスの革新を促す新たな材料としての応用が期待されています。
研究の背景
昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、エレクトロニクス分野ではテラヘルツ以上の超高速動作が求められています。しかし、従来の強誘電体は重いイオンや分子の移動が必要であり、そのためにスピードが制限され、エネルギー消費や材料の劣化といった課題が常につきまとっていました。
今回の共同研究は、東北大学の岩井伸一郎教授、伊藤弘毅助教(関西学院大学)、東京科学大学の沖本洋一准教授、岡山大学の池田直教授らによって行われました。研究グループは、LuFe2O4にテラヘルツ波を照射することで、バルク強誘電体の中でも過去最大の電気分極変化を観測しました。
発見の重要性
この研究の核となるのは、電子強誘電体が軽い電子雲の変形によって分極が生じる点です。これまで一般的に考えられていた重いイオンが関与する方式とは異なり、多数の電子がグループで協力し、1ピコ秒以下の極めて短い時間内に連携して変動する様子が明らかになりました。この高い応答速度は、将来的に超高速強誘電体メモリなどの新しい光エレクトロニクスデバイスの開発に寄与することが期待されます。
研究の詳細
この重要な研究成果は、2025年9月4日に米国物理学会の科学誌『Physical Review Letters』にオンライン掲載され、広く学術界に認められました。
研究は日本の科学技術振興機構(JST)や文部科学省からの支援を受けて進められており、国際的な研究の中で重要な役割を果たしています。
将来の応用と期待
この発見が示すように、ハイテク社会において速度と効率がますます重要視される中、ルテチウム鉄酸化物を基にした新しいエレクトロニクスデバイスは、持続可能な社会の構築にも寄与する可能性があります。
この先、研究チームはさらなる応用を探求し、産業界との連携を強化していくことで、将来的なエレクトロニクスの発展に寄与できることが期待されています。岡山大学、東北大学、東京科学大学が連携し、科学技術の新たな地平を切り開くことができるのです。