尼崎市における特殊詐欺の現状と取り組み
特殊詐欺は年々増加傾向にありますが、尼崎市ではその認知件数が減少しているというユニークな状況が見られています。近年は特に、特殊詐欺検知AIの導入や市民への啓発活動がその要因として考えられています。
特殊詐欺の認知件数の変化
令和4年以降、尼崎市では特殊詐欺の認知件数が目に見えて減少しました。令和6年には86件の認知があり、これは令和4年と比べて27件減少した数字です。一方、兵庫県全体では34%の増加が報告されており、尼崎市の取り組みの効果が浮き彫りになっています。
取り組み内容
尼崎市では、特殊詐欺撲滅に向けた具体的な施策をいくつか講じています。その中でも特に注目すべきは、特殊詐欺検知AIに関する共同研究です。この研究は、学校法人東洋大学と富士通株式会社と協力して行われており、AIと犯罪心理学を融合させた例は日本初と言われています。
1. 特殊詐欺検知AIに関する共同研究
この共同研究は令和4年度から開始され、実際に高齢者を対象とした実証実験も行われました。実験では、22名の参加者にバイタル測定可能なセンサーを設置し、心理状態の分析と特殊詐欺リスクの検知に挑戦しました。
# 実証実験の結果
実験結果によると、心理状態と呼吸数・心拍数といったバイタルサインを組み合わせることで、参加者が特殊詐欺の電話を受けているかどうかを82%の精度で検知できることが判明しました。この結果は特に重要で、犯罪者が宥めたり特別感を演出した際に、対象者が警戒心を失い、詐欺に引っかかる要因となることが示されています。
2. 自動録音機能付電話機等の購入補助
次に、市では自動録音機能付電話機の購入を補助する取り組みも行っています。これにより、市内の約2000世帯に防犯機能を備えた電話機が設置され、高齢者の方々の詐欺被害を予防する手助けとなっています。
3. 連携体制の確立
また、市・警察・金融機関の連携も強化され、特殊詐欺が発生した際や兆候が見られた場合の情報共有が行われています。この協力体制は、市民を守るために重要な役割を果たしています。
今後の展望
将来的には、この特殊詐欺検知AIシステムを活用して、さらなる啓発活動に繋げていく計画があります。特に、この夏に実施された特殊詐欺実体験会が成果を上げ、来年度は兵庫県全体での体験会開催が予定されています。これにより、特殊詐欺の手口やそれに対する心理的防御力を市民が学ぶことができ、犯罪を未然に防ぐ手助けとなることでしょう。
結論
尼崎市の特殊詐欺対策は、革新的な技術と地域連携に根ざした取り組みにより、確かな成果を生み出しています。このような努力がさらなる地域の安全を確保するために必要不可欠であることを、私たち一人ひとりが理解し、行動に移すことが求められています。今後もニーズに応じた施策の見直しや新たな技術の導入が期待され、地域の防犯意識がさらに高まることが望まれます。