沖縄海綿の新薬研究
2025-09-24 10:50:55

沖縄産海綿由来の新規抗リーシュマニア化合物が治療法の可能性を示唆

沖縄産海綿由来の新規抗リーシュマニア化合物の発見



沖縄の豊かな自然は、世界の医薬品開発においても注目を集めています。この度、沖縄の海綿動物から強力な抗リーシュマニア活性を持つ新規化合物が発見され、治療薬開発の新たな可能性が示されました。この研究は東京理科大学や琉球大学などの研究グループによって行われました。

リーシュマニア症は、寄生虫リーシュマニア原虫によって引き起こされる熱帯病で、特に皮膚型は治療が難しいことで知られています。現在の治療法には限界があり、薬剤耐性や副作用の問題も抱えています。これらの背景を受けて、研究者たちは沖縄産の海綿から新たな化合物を発見し、その効果を調査しました。

新規化合物「オンナミドG」の発見



研究において、沖縄の海綿動物Theonella sp.から新規化合物「オンナミドG」を含む10種類の天然物質を単離しました。特に注目すべきは、化合物の中でも「オンナミドA」と「6,7-ジヒドロオンナミドA」が極めて高い抗リーシュマニア活性を示し、既存の治療薬アンホテリシンBに比べて約53倍、315倍も強いことがわかりました。

これらの化合物は、ヒト細胞に対しても低い毒性を示し、有効性と安全性の指標である選択性指数が1000倍を超える結果が得られました。このことは、今後の医薬品開発に向けた希望を与えるもので、研究者らはさらなる詳細な研究を進めていく意向を示しています。

リーシュマニア症の現状と背景



リーシュマニア症は、全世界で約1,200万人が感染しており、約3億5,000万人が感染のリスクにさらされています。特に皮膚型リーシュマニア症は、治療薬が限られ、社会的偏見や身体障害を引き起こす危険性があります。現在の治療法は、副作用や耐性の問題があり、安全性と有効性の高い新薬の必要性が高まっています。天然物には多くの生理活性が確認されており、過去にもペニシリンなどが医薬品として利用されています。

未来に向けた展望



沖縄の海に生息する生物資源は、未だ多くの未知の可能性を秘めています。研究を主導した安元准教授は「化学の力で誰かを救う」という信念を持ち、治療が届かない地域の患者に貢献することを目指していると述べています。また、琉球大学の他の教授も沖縄の生物資源の重要性を強調し、抗リーシュマニア活性物質の発見がもたらす影響に期待を寄せています。

この研究は、沖縄イノベーション・エコシステム共同研究推進事業や日本学術振興機構の助成金を受けて実施され、未来の医薬品開発に重要な一歩を踏み出しました。今後の研究によって、さらなる新薬の開発が期待されています。

参考文献


この研究成果は、2025年9月5日に国際学術誌「Marine Biotechnology」にオンラインで発表されており、将来的なリーシュマニア症治療に向けた新たなアプローチが提示されています。


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学校法人東京理科大学
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