岡山理科大学の生物地球学部、佐藤丈晴教授らの研究チームは、最新の技術を駆使して深刻な災害リスクをよりリアルに体感できる手法を開発しました。この革新的なアプローチは、ハザードマップでの被災状況を仮想空間で再現するというもので、特にリスクの具体的な理解を促進します。
2022年から始まったこのプロジェクトは、広島市安佐北区可部町という場所を対象にしています。この地域は、急勾配の扇状地であり、土砂災害警戒区域に指定されています。佐藤教授は、従来の2次元ハザードマップでは土砂の流入深さを表現するのが難しく、住民が実際のリスクを実感しにくいことに課題を感じていました。そこで、広島県の基礎データや国土地理院の地図情報をもとに、3D化を進めてきました。
仮想空間でのハザードマップ再現により、視覚的に土砂の流入がどの程度あるのかを把握でき、ヘッドセットを通じて被災地内を自由に移動することが可能です。参加者は、例えば塀を越えて流入した土砂によって埋まった住宅や、駐車中の車が土砂に覆われる様子を間近で体験することができます。これにより、実際の災害がどのように発生し、その影響がどれほどのものかを、よりリアルに実感することができます。
記者会見では、佐藤教授がメタバース上でのハザードマップの重要性について語りました。「現在いる場所が安全かどうかを知ることが、自分の身を守る第一歩です。また、行政や地域住民からの要望に応じて、さらなる活用方法を模索していきたいです」と強調しています。これは、地域の防災力向上に向けた重要な一歩です。
また、このプロジェクトには岡山市の建設コンサルタント会社「ラグロフ設計工房」も参画しており、地元の知識と技術を結集させています。災害リスクへの理解を深めるために、このような新しい手法が広がることが期待されています。
この取り組みは、今後もさらなる進展が見込まれ、デジタル技術を活かした防災対策の一環として発展するでしょう。特に学生たちにとっても、リアルな体験を通じて学ぶことができる貴重な機会となり、未来の防災リーダーを育成する一助となります。
このプロジェクトに関する詳細な情報は、岡山理科大学の公式サイトやYouTube動画でも見ることができます。今後の他地域への展開にも期待が寄せられ、災害対策の新しい形として注目されることでしょう。