量子カーネルと品質検査
2025-03-24 11:23:14

量子カーネルを用いた農産物品質検査の新しい技術革新とは

慶應義塾大学とTOPPANホールディングスが共同で実現した量子カーネルを用いた農産物の品質検査に関する研究が注目を集めています。この研究では、少量のデータを基にした高精度な異常検知技術が紹介され、2025年に発行される国際科学ジャーナル「EPJ Quantum Technology」にも成果が掲載されることが決まっています。

1. 研究の概要


本研究の主な成果は、少量のトレーニングデータを使用しても高い識別能力を備えた学習モデルを構築できることです。具体的には、正常データ24件、異常データ24件を用いて、量子カーネルを活用した支援ベクトルマシン(SVM)により、画像検査において過去の古典的手法よりも高い精度を達成しました。

2. 量子カーネルの利点


量子カーネルは、古典カーネルに比べ複雑なデータ空間を扱うことができ、特に特定の異常パターンを検出する際に非常に効果的です。この研究の中で、複数の量子回路を設計し、最も効果的な量子カーネルの探索が行われました。その結果、量子カーネルを用いることで、古典的な手法では難しい複雑な特徴の識別が可能となりました。

3. 具体的な成果


研究では、リンゴの内部つる割れを非破壊で検知するため、光透過画像のデータセットを使用しました。量子回路を用いることで、SVMによる機械学習が実現され、高い識別性能が示されました。古典的手法のF1スコアが0.58であったのに対し、最適な量子カーネルQK9は、F1スコア0.80、AUC(受信者動作特性曲線下面積)が0.90に達し、明確な優位性を持つことが確認されています。

4. 今後の展望


この研究は、農業だけでなく製造業など様々な分野での品質検査に応用される可能性があります。少量データでの異常検知が求められる現代の製造業界において、この技術の今後の展開は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるための重要な一歩となるでしょう。また、耐ノイズ性に優れた量子回路の最適化や、さらなる理論の発展も課題として残されています。実際の検査工程への導入に向けた実証実験も進めていく予定です。

5. 研究の重要性


本研究は、量子コンピューティングの進展によって機会を得た量子機械学習の一例です。これにより、農産物や工業製品の品質検査において新たな異常検知の境地が開かれつつあります。日常生活に直結した技術の進化は私たちの未来をさらに明るく導くことでしょう。

本研究は、科学技術振興機構の共創の場形成支援プログラムによって支援されており、今後の社会実装が期待されています。


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会社名
TOPPANホールディングス株式会社
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東京都文京区水道1-3-3
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