静岡大学、画期的なエストロゲン受容体の合成に成功
静岡大学創造科学技術大学院の徳元俊伸教授率いる研究グループが、ヒトエストロゲン膜受容体タンパク質(GPER)の人工合成に成功した。この成果は新たな医薬品の開発に向けた重要な一歩と見なされている。具体的には、この膜受容体を利用した物質検出法を新たに確立し、これにより新規医薬品候補との反応性を簡便に検出できるアッセイ法を導入した。
研究の背景と目的
女性ホルモンであるエストロゲンは、細胞内で様々な遺伝子の転写を促進することで知られているが、最近ではエストロゲンが細胞膜に存在する受容体にも結合して急性反応を引き起こすことが判明している。しかし、従来のステロイドホルモン研究は核受容体に注目が集まっており、膜受容体に関する研究は比較的遅れていた。
大学側の研究者は、これまで合成していたプロゲステロン膜受容体に続き、今度はエストロゲン膜受容体の人工合成を行った。
具体的な研究成果
研究グループは、酵母を用いてGPERを人工合成し、次にこの受容体を用いた新規検出法を開発した。この手法では、合成したGPERが蛍光性ナノ粒子であるグラフェン量子ドット(GQD)と結合し、反応性物質と接触することで蛍光が消光する特性を利用している。この消光現象を測定することで、どの物質がGPERに作用するかを特定できる。
生成した検出系の実績
既にエストロゲンや他のGPER反応性物質を用いた際に、この検出法の有効性が確認されている。これにより、今後さまざまな物質から新規医薬品候補を発見する可能性が広がることが期待されている。
社会的意義と今後の展望
GPERは癌の発症や血圧調節に関与することが示唆されており、GPERに作用する物質の検出法の確立は医学的な可能性を広げる。この方法を用いて新薬を開発することで、今後の治療法の選択肢が増えることが期待される。また、海藻由来の天然化合物からも新薬候補を発見する試みが進められており、研究の波及効果を含めてさらなる成果を見込むことができる。
論文の発表と研究支援
本研究の成果は、2025年9月20日付で国際学術誌「PLOS One」に掲載される予定。研究は日本学術振興会の助成を受けており、静岡大学の「ジェンダード・イノベーション研究支援事業」によっても支援を受けている。この成果は、今後の医療分野における革命的な進展の一助となるだろう。