「見えない死神原発不明がん、百六十日の記録」の全貌
2025年10月24日、集英社から刊行される「見えない死神原発不明がん、百六十日の記録」。著者は東えりか氏。彼女が描く物語は、一見すると個人の壮絶な闘病記のように思えるが、それは医療の在り方や、我々が直面する現実に多くの光を当てる重要な一冊でもある。特に「原発不明がん」という病に関する理解が深まる内容となっている。
「原発不明がん」とは何か?
「原発不明がん」という名称は、悪性腫瘍の一種で、発症部位が特定できないがんのことを指します。近年、日本ではがん罹患者が急増しており、国民の半数が生涯のどこかでがんを経験する可能性があると言われています。そんな中、この「原発不明がん」という存在は多くの人々に恐れを抱かせる病名であります。しかし、具体的にはどのようなものであるのか、詳細に知っている人は少数派でしょう。
夫との闘病生活
物語は、著者の夫である東保雄が原因不明の腹痛を訴えるところから始まります。入院し、さまざまな検査を経ても原因を特定できず、医療現場も困惑するばかり。最終的には「腸閉塞」の診断が下されますが、どうしても肝心の原因は見つからない。その間、夫は確実に衰弱していきます。
療養生活が続く中、医師から告げられた言葉は「がん細胞が見つからない限り、がんではない」というものでした。そのため、著者は医療機関への信頼を持ちながら、途方に暮れる日々を過ごします。
診断と余命告知
入院してから3ヵ月後、ついに突如として「クラスⅤの悪性細胞」が発見されることになります。その瞬間、医師からは驚愕の事実が告げられ、夫の余命はわずか数週間だという衝撃の言葉が響きました。この冷酷な現実が、著者にどのような影響を与えたのかは、本人の語りから感じ取ることができます。
発症から看取りまで
本書は、発症から夫が亡くなるまでの約160日間を詳細に描写しています。入院から診断にかかる時間、治療、退院、在宅での緩和ケアなど、一連の現実を克明に記録することで、読者にがんとの向き合い方、相談窓口の重要性、医療の最前線に関する情報を伝えていきます。医療従事者へのインタビューも交え、最新の治療法や、現状の把握ができる貴重なデータが詰まっています。
読後に残るメッセージ
この本は単なる悲劇の物語ではありません。著者は最愛の人を看取る苦しみの中で何を学び、どのように生きていくのかを問いかけています。読者は、医療に対する疑問や、がんの不安を抱えた時に何をすべきかを考えさせられることでしょう。「見えない死神」は、未来を見据えた希望のメッセージとも言える一冊に仕上がっています。
書籍情報
著者:東えりか(あづま・えりか)
出版:集英社
発売日:2025年10月24日
定価:2,200円(税10%込)
ISBN:978-4-08-781768-3
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