日本のスタートアップ界隈に変革の兆し
経済産業省のスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup」において、第5次選定企業が発表され、その中で特に宇宙系スタートアップの選定数が目を引いています。今回の選定では31社が選ばれ、そのうち8社が宇宙関連企業でした。これは過去の選定からの大きな変化と言えるでしょう。
1. J-Startupの概要と選定基準
「J-Startup」とは、世界で戦えるスタートアップを育成し、新しい技術やビジネスモデルによって国内外に新たな価値を提供することを目指すプログラムです。選定には厳しい審査があり、その結果、選出された企業は多方面からの支援を受けることができるメリットがあります。
初回の選定は2018年6月に行われ、その数は徐々に増加してきました。今年の3月には第5次選定が行われ、これまでの選定企業の累計は272社に達しました。
2. 宇宙系スタートアップの急増
第5次選定で特筆すべきは、宇宙系スタートアップが8社も選ばれた点です。これは以前の選定回での累計7社を大きく上回る数字です。政府は宇宙基本計画を策定し、2030年代には宇宙関連市場を8兆円に拡大する目標を掲げており、これがスタートアップ界にとって追い風となることが期待されています。
過去にJ-Startupに選定された宇宙系スタートアップには、民間初の月面着陸を目指すispaceや、衛星画像データを提供するSynspectiveなどがあり、すでに株式上場を果たした例もあります。
3. 他の事業領域と資金調達状況
さらに、医療分野の「バイオ・ヘルスケア」、製造系、環境系など多様な企業が選定されました。第5次選定企業の資金調達状況を見ると、最も大きかったのはSakana AIで約300億円を調達しています。これはエヌビディアからの出資を受けたことで話題になりました。
選定企業の資金調達額は、一般的に「10-20億円」が多く、10社のうち6社が20-50億円規模の調達を行っています。興味深いことに、選定された企業の多くはシリーズA以下の資金調達段階にあります。
4. 創業者の出身大学
創業者の出身大学を見てみると、東京大学が40社と最も多く、次いで私立大学の慶応義塾大学が続いています。全体的に見ると、国公立大学と私立大学の数字には大きな差は見られません。多くの国際経験を持つ海外大学出身者も含まれており、国際的な視点が取り入れられています。
5. 創業者の年齢と経歴
J-Startup選定企業の社長の平均年齢は34.0歳で、過去5回の選定と比べても最も若いメンバーが多いことが特徴です。コロナ禍で新しい働き方が模索される中、若い世代が新たなビジネスを切り開こうとしている姿勢が反映されています。選定企業の中には、すでに上場を果たした企業も多く、彼らが国内外での成功事例となることが期待されています。
6. チャレンジを促進する文化の重要性
しかし、成功しているスタートアップは少数であり、「多産多死」ともいわれる現状もあります。中には倒産した企業もあり、その個人の財産や評判に影響を及ぼすこともあります。こうした中で再挑戦を可能にする文化が必要です。現在は、失敗からの再チャレンジが評価されつつあり、新たな挑戦を通じた成功が期待されています。
まとめ
スタートアップの市場環境が厳しくなる中でも、政府の支援を受けたJ-Startup選定企業が、国内外で新たな価値を提供し成功事例を生み出すことに期待が寄せられています。特に宇宙系スタートアップの急増は、今後の進展に目が離せない状況です。未来の日本のスタートアップを支えるために、彼らの挑戦を見守りたいと思います。