AIと安全なナノ粒子設計
2023-05-31 14:00:02

人工知能が導くナノ粒子の安全設計:革新的手法で未来材料開発を加速

人工知能が拓くナノ粒子の安全設計:革新的手法で未来材料開発を加速



近年、ナノ粒子は化粧品や電子機器など、私たちの生活に欠かせない様々な製品に使用されています。しかし、その特異な性質から、人体への影響に関する懸念も存在します。この課題に対し、大阪大学を中心とした研究グループが、人工知能(AI)を活用した画期的な安全設計手法を開発しました。

AIが解き明かすナノシリカの安全性



研究グループは、ナノ粒子の一種であるナノシリカに着目。100以上の科学論文からデータを収集し、先進的なAIアルゴリズムを用いて、ナノシリカの安全性予測モデルを構築しました。このモデルは、ナノシリカの濃度、大きさ、表面特性、さらには血液中のタンパク質との反応(ナノシリカ-コロナ複合体)といった要素を考慮することで、高い精度で安全性を予測可能にしています。

安全性向上のための新たな知見



研究の結果、ナノシリカの表面加工や低濃度での使用が安全性を大幅に向上させることが明らかになりました。特に、ナノシリカとタンパク質が結合して形成される「ナノシリカ-コロナ複合体」の挙動を理解することが、安全性の正確な予測に不可欠であることを初めて示しました。これは、ナノ粒子の安全性評価において、新たな知見をもたらす重要な発見です。

厳格な検証による信頼性の確保



研究グループは、モデルの信頼性を高めるため、外部検証を実施しました。これは、独立したデータセットを用いて予測結果を検証する厳格な手法で、モデルの正確性と汎用性を保証しています。この徹底した検証は、研究結果の信頼性を高め、その社会への貢献を大きくしています。

未来への展望:安全なナノ粒子開発への貢献



本研究で開発されたAIを活用した安全性予測モデルは、ナノシリカだけでなく、他のナノ粒子にも応用可能です。化粧品、塗料、繊維、電子機器だけでなく、医薬品にも使用されるリポソームなどへの応用も期待され、より安全で高機能なナノ粒子材料の開発を加速させる可能性を秘めています。

研究の苦労と今後の期待



研究グループは、ナノシリカの細胞毒性に関するデータベースが存在しないことから、文献から情報を手作業で収集するなど、多くの苦労がありました。しかし、この研究成果は、ナノ粒子材料の安全性向上に大きく貢献するだけでなく、データ共有の重要性を改めて示すものです。今後のデータ公開の促進が、更なる研究の発展につながることが期待されます。

研究成果の発表



本研究成果は、2023年5月31日に米国科学誌「ACS Nano」に掲載されました。この成果が、ナノテクノロジー分野における安全性の向上と、より持続可能な社会の実現に貢献することを期待しています。

会社情報

会社名
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
住所
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号
電話番号
072-641-9832

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