AIサービスの急速な浸透と消費者の不安感が浮き彫りに
日本電気株式会社(NEC)は、AIとデジタルサービスの急速な普及が消費者の信頼にどのような影響を与えているかについて調査を行い、結果を「AI時代に変化する消費者意識調査」として公表しました。この調査は、15歳から74歳の一般消費者1,597人を対象に実施され、AIサービスがもたらす利便性と共に顧客が抱える不満や不安感について明らかにしました。
調査結果の概要
調査の結果、AIサービス利用者の75%がパーソナライズされた提案を受けた経験があることが明らかとなり、その便利さが日常生活に浸透していることが伺えます。しかし、同時に約66%が「便利だけれども不安がある」と感じていることも判明しました。これは、利便性を享受する一方で、不正確な情報提供やプライバシーの懸念が影を落としていることを示しています。
さらに、不誠実な体験をしたと感じる人の割合は82%に達し、その理由として「ワナのような設計」や「見えない不安」が挙げられています。これらの体験が引き起こす不信感が消費者行動にどのように影響するのか、特に企業との関係性はどう変わるのかについても調査結果が示唆するものがあります。
顧客の「覚醒」と企業の透明性の重要性
調査では、デジタル化により顧客が企業の活動を見える化できるようになり、製品だけでなく企業全体の姿勢や倫理観が求められる「覚醒した顧客」が増加しています。この顧客層は、企業の不誠実な行動を許さず、SNS等を通じて情報を発信することで企業に対する影響力を持っています。
顧客が不誠実な体験をすると「心が離れる」、「行動で示す」、「言葉で広める」というプロセスを引き起こすことが分かっています。特に企業への信頼が低下すると、その後の購買行動に悪影響を及ぼし、他社製品やサービスへの切り替え、悪評の拡散が加速するという結果も示されています。
デジタルエシックス(倫理)の重要性
調査はまた、デジタルエシックス(倫理)の認知度が極めて低い一方で、その重要性に共感する消費者が90%を超える結果を示しています。デジタルエシックスは、企業が顧客との信頼関係を築くために必要な規範として今後ますます重要な役割を果たすでしょう。企業が公正で透明性を保った行動をすることで、信頼を得ることができ、持続的成長の基盤を築くことが可能になります。
企業の姿勢や社会的責任に対する顧客の評価は、単なる製品の品質を超えて信頼を重視するものへと変化しています。これにより、企業は単なる利便性の追求から、倫理観に基づく信頼性を確立することが求められます。
結論
AIサービスが急速に普及する中で、消費者が抱える不安や不信感は企業にとって大きな課題です。顧客とのコミュニケーションを通じて「デジタルエシックス」を重視し、透明性や説明責任を確保することが、信頼構築のカギとなります。企業はこの流れに対応するため、新たなビジネスチャンスを生かしたアプローチを検討する必要があります。デジタル時代における顧客との健全な関係性を築くために、企業は今後の戦略の見直しを迫られることでしょう。