オオバコの塩ストレス対応
2025-09-03 16:23:59

京都大学などの研究チームがオオバコの塩ストレス対応メカニズムを解明

植物間の情報伝達を解明したオオバコの研究



京都大学、弘前大学、名城大学、福島大学などの研究チームが、オオバコ(Plantago asiatica)が塩ストレスを受けたときの情報伝達の仕組みを解明しました。彼らの研究によると、この植物は地上と地下の両方で塩ストレスに関する情報を他の個体に伝達する能力を持っています。さらに、情報を伝達する相手が地上部と地下部では異なり、遺伝的距離によっても反応が異なることが分かりました。

研究の背景



植物は一度根付くと移動できないため、周囲の環境の変化に迅速に対応することが求められます。特に塩分や乾燥といった環境ストレスが発生した場合、隣接する植物が受けたストレスの影響を受け、自身の生存を守るためにあらかじめ反応する能力が重要です。これまでの研究でも、ストレスを受けた植物は化学物質を放出し、周囲の植物がその情報を受け取って気孔を閉じるといった水分損失を防ぐ反応を示すことが知られています。しかし、地上部と地下部での情報伝達の機能の違いについては不明な点が多くありました。

研究方法と成果



本研究では、地上部(空気)と地下部(根)の情報伝達を分離して評価するための独自の実験系を構築しました。ストレス誘導個体と受容個体を特定の条件下で植え付け、地上部および地下部での気孔の開閉率を測定しました。実験の結果、オオバコは地上と地下の両方を通じて他の個体に塩ストレス情報を伝達することが確認されました。

地下部を介した情報伝達には、遺伝的に近いきょうだい個体ほどより強い反応が示され、最大で55%の気孔閉鎖が観察されました。一方、地上部を介した場合は、遺伝的な距離に関係なく、すべての個体が同様に反応することが明らかになりました。

波及効果と今後の研究



この研究によって、オオバコにおける地上部および地下部の情報伝達が異なる経路を通じて行われ、各経路が異なる適応戦略を持っている可能性が示されました。学術的には、この結果が植物がストレス環境にどのように適応しているかを理解する手助けとなるでしょう。
今後は、どのような化学物質が情報伝達を担っているのか、またどのようにしてこの情報のやり取りがオオバコの生育や集団全体のストレス耐性に寄与しているのかを詳しく調査することが期待されています。

研究者のコメント



研究に関与した京都大学の山尾僚教授は、「地上部と地下部の情報伝達の違いは、オオバコにとって多様な環境で生き延びるための戦略の一環である可能性がある」と述べています。名城大学の大崎晴菜助教は、「植物間の情報のやり取りについての新たな理解が進むことで、植物の巧妙なコミュニケーション能力の進化プロセスに迫れることを期待しています」とコメントしています。

研究結果の意義



本研究は、植物がどのようにストレス情報を受け取り、環境に適応しているのかに関する新たな視点を提供しました。特に、課題である環境ストレスに対する植物の反応の多様性を理解する上で、重要な一歩となりました。詳細な知見は、植物同士のコミュニケーションの理解と共に、植物の群体での生存戦略の解明にも寄与することでしょう。


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