プベルル酸の腎毒性評価
2025-06-30 10:53:07

プベルル酸の腎毒性評価を実現したヒト腎細胞研究の最新成果

プベルル酸の腎毒性評価を実現したヒト腎細胞研究の最新成果



日機装株式会社と名古屋市立大学が共同で行った研究の成果が、英文学術誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」に掲載されました。この論文は、創薬研究における新たなアプローチとして、ヒト腎細胞「3D-RPTEC®」を用いてプベルル酸の腎毒性を評価した内容を詳述しています。著者には、名古屋市立大学の荒川大教授を中心に、金沢大学の後藤教授及び東京大学の楠原教授が名を連ねています。

プベルル酸の腎毒性評価



プベルル酸は、紅麹関連食品から見つかった天然化合物の一つで、腎障害を引き起こす原因物質として知られています。従来の動物実験では、この物質の腎毒性は示されていましたが、人間の腎細胞を使用した研究は行われていませんでした。そこで、荒川教授の研究グループは、3D-RPTEC®(三次元培養のヒト近位尿細管上皮細胞)を使用し、プベルル酸の毒性を評価しました。

実験の結果、7日間にわたるプベルル酸の曝露後、ミトコンドリアの機能障害やATP(アデノシン三リン酸)の減少が確認され、一定の濃度を超えるプベルル酸が腎細胞に毒性を持つことが明らかになりました。また、有機アニオントランスポーター(OAT)の阻害剤であるプロベネシドが毒性の一部を軽減したことから、プベルル酸がOATを介して細胞に取り込まれることが示唆されました。

研究の重要性



荒川教授は、この研究が化学物質の安全性評価において、動物実験に頼らない新たな手法を開発する可能性を示すものだと述べています。従来の評価法では、動物による評価には限界があり、ヒトに特有の毒性を評価することは困難でした。この研究を通じて、3D-RPTEC®を利用することで、人間に即した毒性評価ができることが期待されます。今後、この手法を基に化学物質による腎障害のメカニズム解明や治療法の確立が進むことが期待されています。

3D-RPTEC®の革新性



3D-RPTEC®は、ヒトの初代近位尿細管上皮細胞を三次元で培養したもので、従来の2D細胞培養よりも薬物の応答性が高くなっています。これにより、細胞毒性や薬理的な評価がより敏感に行えると期待されています。

今後の研究展望



食品や医薬品の安全性が重視される現代において、この研究はプベルル酸の腎毒性を明らかにする重要な一歩となりました。日機装は、3D-RPTEC®技術の標準化を目指し、グローバルな安全性評価手法の開発に取り組んでいます。荒川教授と日機装は今後も協力し、動物実験の代替としての評価方法の確立を進める意向です。これにより、創薬の効率化と動物愛護の両立が期待されています。

研究成果を広めるために



この論文の発表は、化学物質による腎障害のリスクを低減するための重要な知見となります。日本薬学会が発行する「Biological and Pharmaceutical Bulletin」への掲載により、さらなる研究が促進されることが期待されています。研究者たちは、今後もこの分野の進展を目指し、貢献していく所存です。

このように、プベルル酸の腎毒性に関する研究は、薬剤の安全性評価や新たな治療法の開発に貢献することが見込まれ、多方面での応用が期待されています。


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会社情報

会社名
日機装株式会社
住所
東京都渋谷区恵比寿4-20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー22階
電話番号
03-3443-3711

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