麦わら細工の魅力と伝統技術
静岡県修善寺を拠点に活動する辻伊斎氏が手掛けた、干支「丙午」の麦わら細工がやっと完成しました。江戸時代から続くこの技術は、今や彼とその母、辻紀子氏の二人のみが守り続けています。彼らが生み出す作品は、麦の繊維から成り立ち、自然の恵みを大切にしながら丁寧に仕上げられています。
作品の制作過程
辻伊斎氏は、麦を育てるところから作品を作り始めます。栽培、収穫、選別、染色、編み上げまでを自身の手作業で行うその作業は、約1年以上もの時間を要します。これほどの手間暇をかける理由は、自然のリズムに合わせた独自の制作スタイルにあります。加えて、質の高い作品を作るためには、時には自然の気候や土壌の状態を見極めながら作業を進める必要があるのです。
このような丹念な手作業を経て、ようやく形を成す「丙午」の麦わら細工。強い意志を持って前を見据える表情と、心の内側に静かに向き合う姿勢を併せ持つこの作品は、二つの異なる側面、「動」と「静寂」を象徴しています。これらは、人生における“大きな力”と“内面的な静けさ”をともに映し出しているのです。
技術の継承
伝統的な大森細工は、現在、大変貴重な技術として親子二人の手で守られています。お二人の長年の経験と積み重ねた技術が、この作品に込められています。例えば、天候を読んだり、麦の質を見極めたりする感覚は、数十年の積み重ねがなければ成し得ない業といえるでしょう。
また、重要なのは、無理に制作ペースを早めたり、数量を増やしたりしないことです。このため、彼らは今回「丙午」を20体のみ制作しました。これが、ゆったりとした時間の中で、心を込めて丁寧に作品を作るための限界なのです。
未来への挑戦
辻伊斎氏は、毎年ひとつの干支を制作するという長期的な目標に取り組んでいます。干支が60年周期で巡ることから、この挑戦は未来に技術を手渡すための大切な一歩とされます。「一年一年を積み重ねながら、静かに未来に技術を託け渡す」という理念を持って、彼は活動を続けています。
このようにして生まれた「丙午」の麦わら細工は、我々の生活空間に温かみを与え、飾られた瞬間からその存在感を放つでしょう。是非、手に取ってその魅力を感じていただきたいものです。作品の詳細や予約は、
伝統屋 暁の公式ECサイトからご確認ください。