熊対策トータルソリューション構想の発表
最近、日本各地で熊被害が増加傾向にあり、その背景には野生動物の生息環境の変化や食料不足が影響しています。このため、熊やイノシシなどの野生動物が人里に近づき、人的被害も増えています。これに対処するための新たな技術導入が求められています。
この度、山岳救助コンテストから生まれたエンジニア集団「Team ArduPilot Japan(TAP-J)」が、産業用ドローンの社会実装を推進する株式会社アイ・ロボティクスと協力し、「熊対策トータルソリューション」の構想を発表しました。これは熊だけでなく、イノシシやシカといった野生動物を対象に、出没の検知から追跡、非致死的な撃退手段、住民への周知、さらには出没予測の可視化までを統合するものです。
具体的には以下の6つのレイヤーで構成されています。
1.
出没検知(早期発見)
最初のステップとして、野生動物の出没を早期に検知する技術を導入します。
2.
ドローン巡回監視
ドローンによる巡回監視で、広範囲を効率的に見守ります。
3.
接近・追跡
出没エリアにドローンを派遣し、野生動物の動きを追跡します。
4.
撃退(非致死)
危険な状況を未然に防ぐための非致死的な撃退手段を開発します。
5.
周知(安全確保)
住民への情報提供を行い、安全な環境づくりを促進します。
6.
可視化(熊デジタルツイン)
出没の予測を科学的に可視化し、危険エリアを特定します。
TAP-Jは国内で自律飛行型ドローンに関する高度な技術を持つエンジニア集団であり、様々な環境下での実証済みのシステムを持っています。そのため、現場での運用が想定された実戦型の技術を開発するのに適しています。
「熊デジタルツイン」構想が描く未来
熊対策として目指すのは、出没および追跡データを一元化し、個体別の行動パターンを把握。さらに危険エリアのヒートマップ化や出没予測を含めた可視化を実現し、科学的根拠に基づく重点監視エリアの設定を行います。
この構想の実現に向けては、自治体や専門家、さらには猟友会や林業関係者との勉強会も計画されており、現場のニーズを直接反映させることを意識しています。
実証に向けた段階的アプローチ
この構想は、2026年度を視野に入れた段階的な実証を行う予定です。2026年度の上半期には勉強会を開き、協力する自治体の選定や現地調査を行い、下半期には基盤整備に向けての準備を進めます。大型統合テストを2026年秋に実施し、2027年シーズンから実証運用を開始する計画です。
アイ・ロボティクスの役割
株式会社アイ・ロボティクスは、本構想に参加して開発を主導する専門家の橋渡し役を担い、情報共有や自治体との調整を進める役割を果たします。TAP-Jの技術力を最大限に引き出し、ニーズに合った技術的な接点を確保することに力を注ぎます。
この革新的な熊対策トータルソリューションは、今後の成長が期待される分野であり、人と野生動物が共存できる社会を築くための重要なステップとなるでしょう。