子どものことばの相談会開催報告~地域格差解消に向けた取り組み~
近年、子どもの発達に関する関心が高まる一方で、ことばの相談先が見つからない、という悩みを抱える保護者は少なくありません。特に、言語聴覚士が不足している地域では、相談の機会すら得られないケースも。
そんな状況を少しでも改善しようと、一般社団法人ことばサポートネットは、2023年11月に愛知県半田市で「子どものためのことばの相談会」を開催しました。本記事では、相談会の実施内容や結果、そして今後の展望についてご紹介します。
相談会開催の背景
ことばサポートネットでは、日頃からオンラインでことばに関する相談を受け付けています。しかし、相談内容によっては、対面での診察が必要となるケースも少なくありません。
そこで、地域の子どもたちに相談の機会を提供するため、浅井スクスク基金の助成と半田市教育委員会の後援を得て、現地での相談会を実施することにしました。
相談会の実施内容
相談会は、2023年11月18日(土)・19日(日)の2日間、愛知県半田市にて開催されました。参加者は、ことばに関する心配事のある親子17組。専門知識・技術をもつ言語聴覚士が相談員を務めました。
相談会への告知は、インターネット、SNS、チラシ配布などを通じて行われました。
相談内容と結果
相談内容の主なものは、以下の通りです。
構音に関する相談:70%
言語発達に関する相談:18%
構音と言語発達に関する相談:6%
吃音に関する相談:6%
特に構音に関する相談では、未熟構音(67%)、側音化構音(25%)、鼻咽腔閉鎖機能不全(8%)といった具体的な問題が挙げられました。
相談員は、それぞれの相談内容に対して、助言や訓練機関等の情報提供などを行いました。具体的な対応としては、助言等が53%、訓練機関等の情報提供が47%を占めています。
相談会では、15歳の「くぐもった声に聞こえる」という主訴のお子さんや、5歳の「サ行がいえない」という主訴のお子さんなど、具体的な事例を紹介し、評価結果や対応内容について発表しました。
相談利用者の声
相談会への参加者からは、以下のような声が寄せられました。
ここ数年もやもやしていたことがすっきりしました
次のステップがわかり非常に有意義でした
定期的に実施いただけると嬉しいです
今までどこへ相談すればよいのか、どこを受診すればいいのかわかりませんでしたが、今日のお話で色々な所を知り、子どものために動いてあげられそうです
考察と展望
相談会を通して、対面での対応が必須と思われるケースと、ビデオ通話でも一定の効果が見込めるケースがあることがわかりました。
専門性の高い言語聴覚士への相談機会の確保には、対面とビデオ通話を併用していくことが有効な手段となる可能性が示唆されました。
また、言語聴覚士の認知度が低いことが、相談に繋がりづらい一因になっている可能性も浮き彫りになりました。そのため、自治体等と連携した定期的な相談機会の確保や、教育機関等に向けた啓発活動が必要と考えられます。
今後の展望~言語聴覚士の社会資源の地域差解消に向けて~
今回の相談会は、早期に満席となり、ことばの相談事業への関心の高さと、相談先に悩んでいた方が多数いらっしゃったことが明らかになりました。
地域で行う現地開催の相談会の意義を実感するとともに、ICTを活用することで、これまでサポートを受けられなかったお子さんにも支援を届けられる可能性を感じています。
必要性があっても、待機期間が長い、近くに専門職がいないといった状況に辛い思いをされるお子さん、保護者の方が少しでも減るよう、今後も活動を続けてまいります。
一般社団法人ことばサポートネットについて
ことばサポートネットは、ことばや発音に悩む方々に、言語聴覚士がいつでも寄り添える体制づくりを目指しています。
オンラインことばの相談・発音練習
お子さん・保護者様向けイベント
園・学校・保健センターでのことばの教室
専門職向け講座・講習会
* 研修・啓蒙・調査研究
詳細については、公式ウェブサイトをご覧ください。
一般社団法人ことばサポートネット
https://www.kotoba-support-net.org/