国内最大規模の脱炭素研究開発事業、TOKYO PRIZEとは
2023年に実施された『TOKYO PRIZE Carbon Reduction』は、東京都が運営するスタートアップ支援事業の一環として、ANRIが主催した懸賞型研究開発プログラムです。このプログラムは、脱炭素をテーマにした研究や技術の実用化を目指す取り組みであり、総額約1億円の賞金が用意されています。これにより、持続可能な未来の構築を目指して、多様なプレイヤーからの革新的なアイデアが集まりました。
応募内容と審査
脱炭素技術に特化した54件の提案が集まり、その中から優秀な技術が厳選されました。審査では、GHG(温室効果ガス)削減に貢献できるかという観点が重視され、選考は非常に厳正でした。そこで選ばれた受賞チームの紹介が、2025年3月12日に行われました。
受賞チームの紹介
【優勝】沸騰技術で省エネを実現
優勝を果たしたのは、九州大学の教授、森昌司氏率いるチームです。彼らの提案は、世界最高レベルの冷却性能を誇る「ハニカム局所浸漬沸騰冷却技術」を実用化するもので、データセンターや車載用パワーデバイスの冷却において革命的な効果を発揮することが期待されています。受賞金は、まずはゲーミングPC市場での実証実験に使用されるとのこと。
【入賞】5チームの技術
入賞を果たしたのは、以下の5つのチームです。
- - ESREE Energy株式会社(代表:岩田貴文氏)
電力の完全脱炭素化を目指し、長期エネルギー貯蔵技術(LDES)の開発を進めます。賞金は効率的なヒートポンプ蓄熱の研究に充当される予定です。
- - ElectroFluxion(代表:衣笠仁教氏)
化学品製造の電化に取り組む同社は、社会課題解決を目指した次世代の製造方法を確立するため、パイロットスケールでの実証実験を進めます。
- - 信州大学金子・大塚研究グループ(代表:大塚隼人氏)
グラフェン包接ゼオライト分離膜を採用した低コストかつ高効率な酸素製造技術を発展させ、年間1億トンのCO2排出削減を目指します。
- - 東北大学藪研究室/AZUL Energy株式会社(代表:藪浩氏)
レアメタルフリー触媒を用いたCO2資源化技術を開発し、この技術をさらに進化させることを目指します。
- - Planet Savers株式会社(代表:池上京氏)
大気中CO2直接回収技術(DAC)を開発し、グローバル規模での展開を視野に入れた研究開発を進めます。
運営者のコメント
運営事務局を代表してANRIの土本氏は、54件もの応募が集まったことを喜び、様々なプレイヤーから寄せられた技術の質に驚いていると語りました。また、受賞チームが持つ技術の成長と、脱炭素分野全体の進化が促進されることへの期待を示しました。
東京都のスタートアップ支援
東京都は、日本におけるスタートアップ支援の強化を目的とし、「Global Innovation with STARTUPS」として、新たな挑戦者の活躍をサポートするための戦略を策定しています。今回の『TOKYO PRIZE Carbon Reduction』も、その一環として多様な企業を支援するものです。
ANRIの取り組み
ANRIは2012年に設立され、創業期のスタートアップへの投資を行ってきました。特に脱炭素分野に特化したファンドも運用しており、未来を共に創るための支援を続けています。今後も多様な技術を用いたスタートアップへの投資と支援を積極的に行っていく予定です。
このように、TOKYO PRIZEは脱炭素に向けた新たな技術の発掘と普及を目指し、今後の持続可能な社会の実現に貢献していくことが期待されています。