東京大学を巡る衝撃の実態
東京大学は日本の学歴社会の象徴であり、政界や経済界での成功を収める多くの卒業生を輩出しています。しかし、同大学に入学したからこそ直面した苦しみや後悔を抱える卒業生もいることをご存じでしょうか。池田渓さんのノンフィクション『東大なんか入らなきゃよかった』は、そうした知られざる東大卒業生たちのリアルな姿に迫ります。この本が新潮文庫から文庫化されたのは、2025年3月28日。
卒業生たちの隠された声
本作に登場するのは、メガバンクでいじめに遭った銀行員、長時間労働に苦しむキャリア官僚、そして年収230万円の警備員としての生活を余儀なくされた卒業生たちです。彼らは、入学前に抱いていた理想とは程遠い現実に直面し、「もし東大に入らなければ」と考えるようになったと語ります。それぞれの人生がどのように狂ってしまったのかを深く掘り下げています。
この本では、2020年に単行本として出版された際の内容に加え、5年後の彼らの様子を追った追加取材も行われています。それにより、時代と共に変化する就職事情や、入学後の厳しい競争、そして独特な進級制度など、外部の人間にはわからない東大のリアルをより詳細に知ることができる内容となっています。
多様な視点で東大を理解する
『東大なんか入らなきゃよかった』は、単なる個人のストーリーにとどまらず、日本の学歴社会が抱える構造的な問題にも目を向けています。また、池田さんのルポを通じて、東大卒業生の生きざまが複雑に絡み合っている様子も浮き彫りにされています。東大生が直面する心理的なプレッシャーや、入学直後から続く過酷な環境が、どのように彼らの人生を形作っているのかを知ることができます。
特に「天才型」「秀才型」「要領型」といったタイプ分けは、東大生の多様性を示し、どのようにしてそれぞれが異なる人生を歩んでいくのかを考えさせられます。著者は、自身が東大卒業生であるという立場から、それらの違いを考察し、共感を誘います。
追加情報と特別対談
また、同日には西岡壱誠さんの『それでも僕は東大に合格したかった─偏差値35からの大逆転─』も発売されます。こちらは、偏差値35から東京大学に合格した経験をもとにした小説で、池田さんとの特別対談も「波」4月号で読むことができます。対談では、東大の複雑さについて話し合い、それぞれの視点からの理解を深めることが期待されます。
総括
『東大なんか入らなきゃよかった』を通じて、多くの東大卒業生が抱えるジレンマや壁に光を当てるこれまでにないアプローチが、多くの読者に新たな気づきを与えてくれることでしょう。この本が提供するのは、単なる学歴の価値を超えた、より多面的な視点からの「東大」の理解です。ぜひ手に取って、多角的に考察してみてください。