日本M&Aセンターとオルツが新たな挑戦
東京都に本社を置く株式会社オルツと、日本国内最大手のM&A仲介会社である株式会社日本M&Aセンターが、AIクローン技術を基にしたM&Aマッチングシステム「CloneM&A」の実証実験を開始しました。この取り組みは中小企業のM&Aにおける新たな解決策として、世界初の試みとされています。
事業承継問題の深刻化
近年、企業の経営者の高齢化が進む中で、特に中小企業における事業承継の問題が深刻化しています。後継者が不在なために廃業の危機に瀕する企業は全国で60万社を超え、その中でも特に危険視される約20万社の多くは70歳以上の経営者が率いています。このままでは、事業承継を果たすためには年間約4万件のM&Aが必要とされる一方、2024年のM&A成約件数は4,000件ほどとされ、このギャップが問題となっています。
M&A仲介業界の現状
この状況において、M&A仲介業者数は増加していますが、成約率は依然として低水準で推移しています。1人あたりの年間成約件数は平均1件ほどで、成約率も約2割に留まっています。このため、多くの企業は事業承継の課題を抱え、解決策を見失っているのが現状です。こうした背景から、M&Aの形式自体を革新し、成約率を大幅に向上させる新たなソリューションが切望されています。
CloneM&Aの目指すもの
「CloneM&A」は、AI技術を駆使して企業間のマッチングを行うシステムです。売手企業のクローンを生成し、数千の買手企業クローンと仮想面談を行わせ、マッチングスコアや相乗効果を算出することで、最適なマッチング候補の探索を実現します。この過程で、音声データや事業資料を学習することが可能となり、従来のキーワードマッチングに比べて高精度なマッチングが実現されています。
実証実験の意義と期待
本実証実験により、M&Aにおける新たな可能性を拓くことが期待されています。具体的には、日本M&Aセンターの業務特性を踏まえたプロトタイプを構築し、実務に即したマッチング精度を検証します。また、AIを活用して事業承継問題を解決することで、社会全体にポジティブな影響を与えることを目指しています。
今後の展望
2024年11月には、AIクローン技術を応用したM&A成約事例が発表される予定です。このプロジェクトを通じて「CloneM&A」は、M&A業界の新たなスタンダードとなることを目指し、中小企業の健全な存続をサポートすることが期待されています。新たな技術が、M&Aの未来をどう変えるのか注目が集まります。