幼児の運動習慣における親の影響と地域づくりの必要性
近年、幼児の運動習慣に関する研究が進む中、笹川スポーツ財団が実施した大規模な調査が注目を集めています。この調査は、全国の3~6歳の幼児を対象に、幼児の運動状況と生活環境との関係を明らかにすることを目的としています。その結果、幼児が運動する際に影響を与えるのは、意外にも公園の数や緑地の多さではなく、家庭での親子のふれあいや親同士のつながりであることが示されました。
調査の背景と目的
従来、物理的な環境(公園や緑地の存在など)が幼児の運動に与える影響が重視されてきました。公園があれば子どもは自然と遊ぶと考えられてきたのです。しかし、この調査はその前提を見直すものであり、従来の観念を覆す結果が得られました。
調査結果の要点
調査では3,144名の幼児を対象に、運動時間と様々な要因を分析。結果は大きく以下の3つに分かれました。
1.
家庭・社会的環境の影響が大きい
- 親子で一緒に体を動かすことが、幼児の運動時間に最も強く関連していることがわかりました。毎日体を動かす家庭の幼児は、週あたり452分も運動時間が長くなります。
- また、親が運動している家庭では、幼児の運動時間も長くなる傾向があります。
2.
親同士のつながり
- ママ友やパパ友が多い家庭の方が、幼児の運動時間が長いという結果が出ました。親同士の交流が情報交換や遊びの機会を生むことが寄与していると考えられます。
3.
近隣環境の影響は限定的
- 逆に、公園の数や治安などの物理的要因は、幼児の運動時間に有意な影響を与えないことが明らかになりました。
海外の成功事例から学ぶ
調査結果をもとに、笹川スポーツ財団では「アクティブシティ」と呼ばれる、身体活動を促進する都市づくりの先進事例を分析しました。リバプール、アントワープ、グダンスク、リュブリャナ、ウメオなどの都市では、以下のような施策が成功しています。
- - データに基づく政策立案
- - アクティブモビリティを推進するインフラ整備
- - 学校との連携強化
- - 子ども参加の機会の創出
- - 家庭負担を軽減するインセンティブ制度
これらの要素は、日本でも適用可能で、地域における運動環境の改善に寄与するでしょう。
マチづくりの提言
調査結果に基づき、今後の地域づくりにおいては、以下の対策が提言されています。
- - 親子での運動機会を増加させるプログラムの提供
- - 親自身が運動できる環境の整備
- - 保育園・幼稚園との連携強化
- - 保護者のフィジカルリテラシー向上に関する講座の実施
- - 全ての子どもに運動機会を提供する支援
このようなソフト面での支援が、幼児の運動習慣に与える影響は非常に大きいと考えられます。
まとめ
笹川スポーツ財団の研究は、子どもたちの運動習慣を育むためには、家庭内の環境が特に重要であることを強調しています。そして地域全体で親子活動を支援することが、より健やかな育成へとつながるのです。親が子どもと共に楽しみながら体を動かすことは、将来的な運動習慣形成にとって欠かせない要素となります。今後のまちづくりは、親子の絆を強める支援を中心に据えるべきです。