常石造船が進水したメタノール燃料ウルトラマックス
2023年11月22日、広島県福山市に本社を置く常石造船株式会社が、世界初となる6万5,700トン型のメタノール燃料ばら積み貨物船「TESS66 AEROLINE」を進水させました。この新型船は、環境に配慮した運航を可能にするとともに、優れた積載性能を兼ね備えています。2025年春には竣工する予定です。
環境への配慮と排出削減
TESS66は、業界における新たなスタンダードとも言える存在です。従来の重油と比較して、窒素酸化物(NOx)は最大約80%、硫黄酸化物(SOx)は最大約99%、二酸化炭素(CO2)も約10%削減することが可能となっています。さらに、この船舶が使用するメタノールは、再生可能エネルギー由来の水素やバイオマスから合成された「グリーンメタノール」であり、カーボンニュートラルの実現に寄与します。
先進技術の結晶
船体は、広いメタノール燃料タンクを船尾甲板上に配置することで、荷役の安全性と効率性を向上させています。また、積載容量は81,500㎥、載貨重量は65,700MTというウルトラマックス船型の特性を活かした設計がなされています。加えて、燃費効率を高めるために、主機の選定や風圧抵抗を低減する「AEROLINE」技術が実装されています。
常石造船の常務執行役員であり常石工場の工場長を務める伊達正敬氏は、「カーボンニュートラルの実現に向けた新燃料船の開発が進んでいることを誇りに思います。今年はLPG運搬船のために開発した圧力式タンクの内製化を成功させました。この技術をメタノール燃料タンクの製作にも活かしていきます。今後も海外工場での建造に向け、技術の展開を強化し、船舶業界の脱炭素化に貢献していきます。」とコメントしています。
常石造船の概要
常石造船は1917年に設立された老舗の造船会社で、主にばら積み貨物船、タンカー、コンテナ船の建造を行っています。本社工場に加えて、フィリピンや中国などにも工場を持ち、国際的に事業を展開しています。740億円もの資本金と約20,000人の従業員を有する常石グループの中核として、環境に優しい船舶を提供することに注力しています。
常石造船が手掛ける新しいメタノール燃料ウルトラマックスは、今後の造船業界における環境負荷削減の鍵となるでしょう。これにより、持続可能な未来へ向けた一歩が踏み出されたのです。