摂南大学の久保学長が日本農学賞を受賞し農業研究の新たな地平を開く

久保康之学長の受賞がもたらす農業界への影響

2023年4月5日、摂南大学の久保康之学長が、日本農学賞及び読売農学賞を受賞しました。この栄誉は、彼がこれまでに行ってきた「ウリ類炭疽病菌の付着器侵入の分子機構に関する研究」に対して贈られました。日本農学賞は、日本の農学研究者にとって最高の栄誉とされており、久保学長の業績が広く認知されたことを示しています。

研究の背景と成果

植物の病気の多くは糸状菌（カビ）が原因であり、特に炭疽病菌は世界中で600種を超える農作物に影響を及ぼしています。この病原菌による感染は、果樹や野菜の収量や品質に深刻な影響をもたらすため、農業現場での病害管理は非常に重要な課題です。久保学長は、この炭疽病菌が植物に侵入する際に形成する「付着器」に着目し、感染のメカニズムを分子レベルで解明しました。

彼の研究では、植物感染において付着器の機能がメラニン色素の合成に依存していることを世界で初めて証明しました。この発見により、色素合成を阻害することで植物を病気から守る可能性が示されました。この知見は、現在の非殺菌的農薬の開発へとつながり、農業現場で応用されています。

今後の農業への影響

久保学長のこれまでの研究成果は、従来の化学防除技術の枠組みにとらわれず、新たな病害管理技術の確立を目指しています。環境に優しい防除資材の開発も視野に入れられており、持続可能な農業の実現と、今後の食料生産の安定化に寄与できることが期待されています。

さらに、ウリ類炭疽病菌をモデルとして、他の糸状菌の遺伝的解析手法を確立し、病原性遺伝子や細胞周期の制御についての理解を深めています。これにより、農業現場での病害防除技術が強化され、人間の食生活に直結する農作物の質が向上することになります。