絶縁体が半導体に進化!ポリオキソメタレートの新たな可能性
岐阜大学工学部の研究グループが、ポリオキソメタレート(略称POM)を白金多核錯体で繋ぎ、絶縁体から半導体に変換させるという画期的な研究を発表しました。この成果は、エネルギー効率や機能性に富んだ新しい材料の開発に寄与すると期待されています。
研究の概要
この研究では、モリブデン12核および18核のポリオキソメタレートと白金多核錯体を用いた3種類の混合原子価集積体を合成しました。結果、これらの集積体における金属の酸化数は非整数となり、近赤外光を強く吸収する特性が認められました。特に、常温での導電率は10^{-6} S/cmであり、非常に低い活性化エネルギーを持つ半導体であることが明らかになったのです。
研究成果の意義
ポリオキソメタレートは高原子価の金属が酸素原子で連結した多核金属錯体です。従来、POM自体は絶縁体の特性を持つため、電気をほとんど通さないとされてきました。しかし、研究者たちは新たな方法でPOMと白金多核錯体を電子的に相互作用させ、導電パスを形成することに成功しました。これにより、POMを用いた新しい電子材料の開発が期待されています。
近赤外光吸収の特性
この新しい素材は、近赤外光を強く吸収します。これにより、光電変換デバイスやセンサーの開発につながる可能性があります。研究者たちは、今後の応用として、電池や触媒に利用する計画も立てています。
研究の背景と発展性
ポリオキソメタレートは、様々な金属種や内包イオンを持つため多様な派生体を持ちます。これを応用することで、将来的にはバンドギャップ制御や高伝導体の生成が期待されます。また、集積体の組成を変えることで、さらに多くの特性を引き出すことができるでしょう。
研究は、岐阜大学の植村一広准教授を筆頭に、大鹿桃果さん、長谷川遥さん、高森敦志さん、東京大学の佐藤正寛准教授が共同で行いました。これらの成果は、2024年8月6日にAngewandte Chemie International Edition誌に公開されています。
まとめ
この研究は、絶縁体ポリオキソメタレートの特性を用いて新たな半導体材料の可能性を開くものであり、今後の研究及び実用化に向けて多くの期待が寄せられています。本研究の進展が、より効率的なエネルギー技術や新しい機能性材料の創出につながることを願っています。