NanoFrontierとPFAS問題への新たなアプローチ
東北大学発のスタートアップ、
NanoFrontier株式会社が、経済産業省の「Go-Tech事業」に採択され、新たに有機ナノ色素を利用したPFAS(有機フッ素化合物)検出技術の開発を始めました。この技術開発は、PFAS問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出すものと期待されています。
特にPFASは、人の健康と環境に影響を及ぼすとして、各国で規制が厳しくなっています。米国では、2024年に飲料水中のPFASに対する法的拘束力を持つ基準が制定され、日本でも水質基準の引き上げが進められています。このような状況下で、PFASの迅速かつ簡便な検出技術は、多くの自治体や企業にとって急務となっています。
Go-Tech事業とNanoFrontierの戦略
Go-Tech事業は中小企業が大学や研究機関と連携し、最大3年間研究開発から商業化まで支援する制度です。NanoFrontierはこの制度を活用して、東北大学の研究チームとともに、有機ナノ粒子を用いたPFASの迅速検出技術の量産化と安定供給を目指します。
これまでのPFASの検出は複雑な技術が必要で、高額かつ手間がかかるため、現場での即時判断には向いていませんでした。しかし、NanoFrontierの新技術は、視覚的にPFASの存在を確認できるため、現場での意思決定が速やかに行えるメリットがあります。
新技術の詳細と競争優位性
NanoFrontierが開発するのは、
難水溶性の有機色素をナノ粒子化した新しい試薬品です。この試薬が水中に存在する特定のPFASに反応し、瞬時にカラー変化を示すことで、その場でのリアルタイム検出が可能になります。
現在の一般的な検出方法であるLC-MS/MS(液体クロマトグラフ質量分析法)は、数時間から数日の分析時間を要し、高度な専門知識も必要です。これに対して、NanoFrontierの技術は即効性があり、手軽に扱えることが大きな強みです。これにより、浄水場や工場排水のモニタリングが実現し、日々の環境安全管理に寄与します。
有機ナノ色素の具体的なユースケース
1.
リアルタイムモニタリング: 浄水場や工場の排水処理において、PFASの濃度を頻繁に測定し、環境基準を管理することが可能です。
2.
除去プロセスの最適化: 除去装置の運用コストや効果を可視化し、活性炭やイオン交換樹脂の最適な使用を支援します。
3.
材料の受入検査: リサイクル材料や副生成物の混入リスクを簡便にスクリーニングし、PFASの不意の持ち込みを防止します。
4.
広域観測: 汚染が懸念される地域での迅速な観測が可能となり、自治体や企業が早期に対応策を講じることができます。
共同実証・用途開発パートナー募集
NanoFrontierは、PFASに関連する事業者や自治体と連携し、共同実証・用途開発のためのパートナーを広く募集しています。また、水道事業体へのサポートを行い、現場のデータに基づいたソリューションを共に構築していくために、意見の交換を進めています。
代表者のコメント
「Go-Tech事業の採択は当社にとって大きな意義があり、引き続きPFASの普及と水質安全への貢献を目指して努力していきます。皆さんが、その場でPFASの有無を確認できる時代を共に作り上げましょう。」と、代表取締役の井上 誠也氏は語ります。
会社概要
- - 会社名: NanoFrontier株式会社
- - 所在地: 宮城県仙台市青葉区中央4丁目4-19
- - 設立: 2025年4月7日
- - 事業内容: 有機ナノ粒子技術を使った試薬の開発と製造、技術コンサルティング
詳しくは
公式サイトをご覧ください。